重ねた謝罪_5 ページ5
深夜1時20分を告げる時計が、
カチカチ、と小さく時を刻む音だけが、流れていた。
『…無事に、避難できたんですね』
「あぁ。
ギリギリだったけどな。
…悪かった、な」
『…え』
「あーいや…
その、アンタ、色々考えてたんじゃねぇかと思って。」
―――
あの日。
倉庫に残された松田は、
フラリ、と立ち上がろうとしながらも、
もう、間に合わないだろうことを静かに悟っていた。
永澤を投げ飛ばした際に、
自身の足首近くをかすめたナイフ。
永澤が手の力を緩めなかったため、
その傷は決して浅いものではなかった。
(…やっちまったな…)
諦めのようなため息を漏らした瞬間、
「松田…！」
大きな声に咄嗟に顔を上げると同時に、
自身の体に感じる強い浮力。
気づけば間近に、
見知った顔、
降谷の顔があった。
「…松田さん！」
直後、
毛利小五郎の事務所に居候してる小学生、
江戸川コナンが現れた。
安室、いや、降谷は風見から事情を聞いた瞬間に、
倉庫へと全力で向かった。
そして、コナンもまた、安室と風見の会話を聞き (なかば盗み聞きのような形であったが)、
爆弾のこと、松田が取り残されていることを知り、
同時に倉庫へ向かったのだった。
葵が警官に倉庫から移動させられる瞬間、
葵が倉庫から目を離した一瞬のことだった。
松田を抱えたまま、
降谷は倉庫奥へ走り出して。
「お、おい…
そっちには爆弾が――」
「安室さん！」
パリィン…
倉庫の奥、つまり、爆弾の方へ向かう降谷に、
反論する松田。
そのすぐ横を、
コナンの声とともに、
何かが猛スピードで飛んで行ったと思った直後、
倉庫奥の窓ガラスが、勢いよく割れたのだ。
降谷は、
松田を抱えたままスピードを緩めることなく、
割れた窓の方へと走りーーー
そして、コナンも猛スピードで同じく倉庫奥、
割れた窓へと走って。
「…コナンくん！」
降谷は松田を抱えながら、
足元へ追いついたコナンの体を片手で持ち上げると――
そのまま、
人2人がギリギリ通れるほどの2Fの窓から、勢いよく外へ飛び出したのだ。
それは、
倉庫が爆破する、
わずか数秒前のことだった。
――
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作者名：white12
| 作成日時：2019年7月10日 13時
