逃れられない想いとともに。(4)【松田陣平】 (ページ37)

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結城　葵_4 ページ37

『…え？』

「…泣いた、のか？」

触れずにいよう、と考えていたのだが、
松田には、それは、出来なかった。

『あ…。

今日、お墓に行って…
隼人兄ぃ、と、それから、

父の…』

「…。」

『…ダメ、ですね。
やっぱり、まだ…

上手く受け止められなくって。
ずっと…向き合って…こな、かった…から』

再び涙腺が緩み、その目が潤み始めると、
葵はすっと松田から視線を外した。

『ご、ごめんなさい。
だ、大丈夫、です、から…

ちゃんと、向き合わないとって…

っ…』

突如体勢を崩されたことで、葵の言葉が途切れる。

タバコの匂い。
目の前には、松田の胸。

『え…』

葵は、自身が松田に抱きしめられていることに気づき、
戸惑い始める。

「…だから、なんで1人でそうやって抱えようとすんだよ…

あの、立花ってアンタの友達だって、いるだろうが…」

『…
ちゃんと、話をしたかったんです。』

葵はしばらく黙り込んだ後、
またも自分に言い聞かせるように、ゆっくりと話し出した。

「…？」

『これまでは、
…誰にも、言いたくなくて、

言えば、全部、
色々なものが、崩れてくるのが、自分で…わかってたので。

…１人で抱えてた、のかもしれません。
そう、だったと思います。

でも、
松田さんに、言われて…

隼人兄ぃの、ことも、

ずっと目を背けてた、あの父の事件も、
父に言わなきゃいけないことも、

ちゃんと、向き合いたいって、思ったんです。
自分で。
そうしなきゃって、思うから…

だから、話を、して、きたんです。

でも、なかなか…、ダメ、ですね。
なんか…、ずっと心のどこかにあった、
柱というか…
壁というか…
そういうのが、崩れてしまったような、感覚、で…

でも、
そんな壁を作ってるままじゃ、
向き合うことが出来ない、から…。』