逃れられない想いとともに。(4)【松田陣平】 (ページ25)

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過去との対峙_7 ページ25

「…どういう意味だよ。」

『…』

「…まさか、アンタを刺すことで、

もう一度刑務所に入れるつもりだった、っつーのかよ…」

『…自己顕示欲にまみれた人間は、
それを満たすために犯罪を犯す、人の命を奪うような人間は、
その心根はきっと変わらない。

更生した、とはとても思えないあの男なら、
尚更…

殺したいって思ったことも、ありました。
何度も。

でも、それじゃ、ダメだって、
そんなんじゃ、何も変わらないから…。
弁護士として、どうするべきかって、
そう、言い聞かせてました…

でも、それは、やっぱり、
何度考えても、正しい答えなんか分からなくて…』

もう少しだったのに…

淡々と言葉を紡ぐ葵は、
小さく口元を歪めた。

(やっぱり…、殺したいほど憎んだ犯人…って。)
違う、と言っていたのは、やはり嘘だったのか。

その視線は相変わらず地面を見つめたまま、
松田のそれとは合わない。
プツリと何かが切れたように力の抜けた様子で、その目が静かに揺れ始めた。

それと同時に、
松田の中でも何かが弾けたように、
悲痛な声を上げる。

「…本当に刺されてたらどうすんだよ…

刺されて、
…アンタ自身が死んじまったら、
どうするつもりだったんだよ…！」