過去との対峙 ページ19
10月に入り、暑さも和らいできた頃。
今日は午後から雨という予報通り、
空には、どんよりとした色の雲が広がっている。
非番である松田は、
コンビニに行こうと、アパートの階段を降りていた。
あの日永澤に刺された足は、
もうすっかり完治していた。
アパートを出ると、
ふと、1人の女が、焦った様子でこちらに向かってくる。
「あ…
松田、さんですよね…？
えっと、警視庁の刑事さん、の…」
以前会った時とは違い、
私服姿で、サングラスを外した松田に、
やや不安そうに問いかけてくるのは、何となく見知ったような顔の女。
「…そうだが、
アンタは…」
「あの、葵の友人の立花…立花香織です。
少し前に、米花町で一度お会いして…」
そう言えば、先日アイツの友人だと、
一方的な挨拶をしてきた女だ。
「あの…葵、見かけませんでしたか？」
「は…？」
「昨日から、連絡が取れなくて…。
事務所にも一応連絡してみたら、
昨日から体調不良で休んでるって言われたんですけど…
部屋にいない、みたいで…」
葵の部屋がある向かいのマンション。
何度インターホンを鳴らしても、反応が無かったそうだ。
「…いや、見てねぇけど」
寝込んでんじゃねぇか？
という松田に、香織は少し深刻そうな表情になる。
「そう…かも、しれないですけど…
携帯は電源が切れてるみたいで…」
何か、事件に巻き込まれた可能性を心配している、のか。
「とりあえずもう一度、
部屋、呼び出してみる…か？」
向かいのエントランスに、香織とともに向かい、
彼女から聞いた部屋番号のインターホンを鳴らす松田だったが、
何度鳴らしても、やはり返事はない。
中から出てくる人間もおらず、
オートロックであるマンション内に入ることは、叶わない。
「心配なら、管理人に相談して部屋に入れて貰う、とか。
…念の為、警察に相談、するか？」
「そう…なんですけど」
深刻そうな表情のまま、何か心当たりのあるような様子を見せる香織。
「…今日、なんです」
「今日？」
「あ、あの…
葵のお父さんの事件のことって…
知ってるんですよね？」
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作者名：white12
| 作成日時：2019年7月10日 13時
