逃れられない想いとともに。(4)【松田陣平】 (ページ13)

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ある日の休日_3 ページ13

昨日米花町のスーパーで起こった強盗未遂事件の捜査を終えた松田は、
警視庁へ戻るため車を止めた路地へ向かっていた。

(そういえば…)

ここ、毛利探偵事務所の近くだったな。
と、ふと思い出す。
そして、あの日、
自身を助けてくれた人物の一人である江戸川コナンの顔。

(…事件現場に、何であそこまで高確率で現れるんだよ、あのボウズ…

でもまぁ、助かった…な。)

迷惑そうな言葉と裏腹に、
小さな礼を心に浮かべる松田。

そして、同じく思い浮かべるのは、旧友である降谷の姿。
昔から頼りになるやつだったが、
自身の、いわば命の恩人になった、人物だ。

(…一生何か言われそうだな…)

どこか嬉しそうな表情を浮かべながら、
歩を進める。

(喫茶店ポアロ、の店員…ね。
アイツも大変そうだ、な)

爽やかな笑顔で、客を出迎える店員姿の降谷、
もとい、安室の姿を思い出す。
「もう二度と来るな」
と言われているので、あれから足を運んだことはないが。

そして、思い出したのは、
葵の姿。
ポアロで、ストーカーに対峙している彼女の、姿。

と同時に、倉庫での出来事、
そして、先日、自身の部屋で泣いていた葵の姿。

あの日以来、葵と顔を合わすことはなかった。
ただ、その2日後に、
ドアに小さな紙袋が掛けられていた。
事件で助けてくれたことに対するお礼、そして、部屋で迷惑をかけてしまったお詫び、
そういったことが書かれたメモと、小さなチョコレートの箱。

以前、
熱で倒れた葵を部屋に運んで寝かせた際、
その後、似たようなことがあった。
貸した洋服と、チョコレートの箱が入っていた。

確か、あの時と同じ、箱だった。

1週間ほど前に、
警視庁のロビーで、彼女の姿を見かけた。
向こうは松田に気づくことはなかった、が。
暑い中、ジャケットを身にまとい、
1人の警官と会話をしている姿。
そして、その横には見知らぬ男。

あれは、確か生活安全課のヤツだった、気がする。
その横にいたのは…、同僚か何かだろうか。

凛とした表情で会話をする葵を遠目に見ながら、
あの日の、葵に感じた違和感が残りつつも、
初めて会ったときのような雰囲気の葵に、
安堵したところ、だった。
仕事、なら当然なのかも、しれないが。