不思議な感覚_2 ページ8
ゆっくり目を開けると、そこは真っ暗だった。
頭が痛い。
ぼんやりする。
五感が鈍っているのが分かる。
しかし、ほんのりタバコの匂いがする、気がした。
(自分の部屋、じゃない…)
どうやらどこかのベッドに寝かされているようだ。
ギシ…という音をたて、上半身を起こすと、手元にひんやりした感触が落ちてきた。
濡らしたタオルのようだ。
(えっと、私…)
ひどい頭痛と、熱っぽさから、エントランスで立ちくらみを起こしたことを思い出す。
それから…
それからの記憶がない。
(病院に運ばれた、のかな…。)
キョロキョロと辺りを見回すと、体の振動とともに、またもギシっとベットが音を立てた。
「ん…
あぁ…起きたのか」
真っ暗な部屋から、男性の声が飛んできた。
聞き覚えのある声だ。
『ま、松田さん…?』
「あぁ。電気、つけるぞ」
電球がつき、照らされた部屋は、見知らぬ空間だった。
目の前には、黒っぽいソファに横たわる男。
ふわっとした天然パーマと、風貌は、確かに松田のように感じたが、
サングラスを外した姿を見たのは初めてだった。
自身は、やはりベッドに寝かされているようだ。
それと、小さなローテーブルにテレビという、シンプルな部屋だった。
『ここ…松田さんの部屋、ですか?』
「あぁ。
アンタ、ひでぇ顔色してたからちょっと気になって、
そしたら、エントランスで倒れてたから。
鍵持ったままって、マジで危ねぇだろ。」
『あ…
運んで、くれたんですか?』
「救急車呼ぶかと思ったんだが、熱っぽかったし、カバンの中に風邪薬も見えたしな。夜だし、とりあえず、寝かして様子見るかと。アンタの部屋も知らねぇしな。
あー、普通は病院連れて行くんだよな。悪ぃ。」
どうしていいか分からなかった、というような困った顔で、ポリポリと後ろ首をかく松田に、葵は不思議な安心感を覚えた。
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作者名:white12 | 作成日時:2019年7月1日 21時