逃れられない想いとともに。(2)【松田陣平】 (ページ37)

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大観覧車_2 ページ37

「では、行ってらっしゃいませー！」

女性スタッフの元気な声とともに、
ガチャンと観覧車のドアが閉まる。

グラリ、と揺れる車内で、とりあえず向かい合って硬い椅子に腰を下ろす2人。
高身長の松田にとっては車内はかなり狭い空間で、頭をうちつけないように屈んでいて。

ガタガタと音を立てながら、ゆっくり高度を上げる観覧車。

『結構揺れますね…』

「あぁ。苦手だったか？」

いえ、大丈夫です。
と答えながらも、安定するまでの不規則な揺れにやや身を固くしながら、
葵は外に目を向けた。

『松田さんはここへは良く来るんですか？』

少しずつ高度が上がり、眼下に広がるモール。
その規模に驚きながら葵が尋ねる。

「いや、用事があったのはここじゃねぇけど。
近くまで来たら、まぁ、コイツが目に入ったから…

ちょっと寄っただけだ」

『コイツ？』

「…あぁ。
この観覧車がな。」

ふと、松田を見ると、外の景色ではなく、
観覧車のドアに視線を向け、そこに触れている。

『どうかしたんですか？』

いや、何でもねぇよ。

と、何かに気づいたように松田が姿勢を戻し、
改めて向き合う形になる。

そうですか、と特にそれ以上聞くことはせず、
葵は再び視線を外に移した。