逃れられない想いとともに。(2)【松田陣平】 (ページ29)

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結城景輔_2 ページ29

6年前の、米花中央公園爆破事件において、殉職。
簡単な記載しかなかったが、
ある事件で公園付近を捜査中、ベンチの下に不審物を確認、
市民を避難させようと動いていた矢先に、不審物が爆発し、巻き込まれた、とあった。

(…結城警部…)

その後、付近に他に爆発物がないか捜索を行うために爆発物処理班が出動したが、爆弾は爆発した1つのみで、犯人も数日後に逮捕された。

社会に名を残したかった
ニュースで騒がれたかった
世間をあっと言わせたかった

そんな馬鹿げた自己顕示欲を満たすためだけに、
予告もなく、爆弾を起動させた。
そう話したのは30代前半の男だった。

同情のしようもない、まさに理不尽な事件。
その後、訳の分からないことを供述し始め、精神疾患により治療中であったことや職場でのいじめなど、
犯人の闇にスポットライトが当てられ、マスコミも騒いでいたことを思い出す。

その頃爆発物処理班のエースであった松田は、もちろん爆弾の捜索に加わっていた。
しかし、萩原を殉職させた犯人を捕まえること、それだけが当時の松田の頭を埋め尽くしていたため、
事件の犯人に怒りをあらわにすることはあっても、
殉職した警官の名前を記憶に留めておくことは出来なかった。

6年前に殉職。

21歳の娘、葵。

個人情報は、殉職した後は更新されない。
つまり、現在27歳ということだ。

正確なところは分からないが、
およその年齢、葵という名前。

アイツのことだろう、か。

松田は、目を瞑った。