不思議な感覚_4 ページ11
午前5時半。
うっすらわずかな光をカーテン越しに受ける部屋で、葵はいつもの時間に目を覚ました。
目の前には、数時間前と同じく、ソファに横たわる松田の姿。
頭は少しぼんやりするが、痛みはほとんど無い。
熱もほぼ引いたようだ。
なんとか出勤出来そうな状況だ。
(寝かせて貰ったのは、助かったな…)
声をかけようかと迷いながら、メモに昨晩のお礼を連ねる。
テーブルに置いてあった葵の自宅の鍵と、その横に知らない鍵。この部屋の鍵だろうと、勝手に拝借し、ポストに入れて部屋を出ると、そういえばここはどこなんだ、と今更ながらに考える。
その答えはアパートの入口で即座に分かった。
目の前に、見慣れたエントランスがあったからだ。
(え、お向かいだったの…?)
ダボダボのカットソーの袖をめくりながら、世の中狭いもんだ、と、いつぞやのように葵は心の底から思った。
ふわっと吹いた風に顔を上げると,空がオレンジ色に染まり始めていた。
今日もいい天気になりそうだ。
すっきりとした心地よさと、
不思議な安心感に包まれながら、今度はしっかりとした足取りで自宅へ向かうのだった。
46人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:white12 | 作成日時:2019年7月1日 21時