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オフの時間_3 ページ43

ほろ酔い気分で一人で帰路につく葵。

店を出た後、
神谷が「僕が送っていきます!」と聞かなかったのだが、
そんなに酔っている奴に付いてこられる方が迷惑だろ、と白石に一蹴されタクシーで帰っていった。

先日の事件を心配して、同じく白石も「送っていく」と提案してくれたのだが、「少し先でタクシーを拾うので」と、やんわり断った。

まぁ、夜風に当たりたいという自己満足もあって、
いつも通り電車と徒歩での帰宅なのだが。
これでまた襲われて怪我でもしたら、
と考えると、決して良いことではないだろうが、葵は誰かと近しい距離になるのがあまり得意ではない。

家族、友人、恋人。
誰かと近しい間柄になることを、出来るだけ避けてきた。
近しい間柄になって、過去に触れられることについての無意識的な防衛反応だろうことを、葵自身も理解していた。
いつまでもこのままではいけないのだが。


マンションの前で、ふと足を止める。

(オフの時間も、大事よね。)

賑やかな場は得意ではない。
でも、何かが発散されるのも確かだ。
心地よい気分を感じながら、それとは裏腹に涙腺が緩みそうになるのを無意識に瞬きで抑え込み、エントランスへと歩を進めた。






__

(こんな時間に一人で帰宅かよ…
ったく、こないだのこと忘れてんのか。

…しかし、まさか、向かいだったとはな。)


紫煙を燻らせながら、ベランダでぼんやり下を眺めていた松田は、見知った人物が向かいのマンションに入っていくのを複雑な表情で見つめていた。

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作者名:white12 | 作成日時:2019年7月1日 21時

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