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再度の面会 ページ25

その後、木本の弁護を引き受けることにした葵は、
改めて事件についての調書を読み返していた。

木本が強盗に入ったコンビニは、
事件があった日の1ヶ月前まで木本がアルバイトをしていた店だった。
店長の話では、辞めた理由は、本人が辞めたいと言い出したからそうで、特別な理由はないようだった。
それは木本の取り調べの内容とも一致している。

もし、木本の犯行が本当だったとしたら、
顔見知りの店員がいる店をなぜわざわざ選んだのか、そこが葵には理解できなかった。
自供内容を記した調書には、
“一番良く知ってる店で、何となく選んだだけ”とのことだったが、
顔を見られるリスクを考えなかったのか。
捕まることを覚悟していたのだとすれば、なぜ当初否認していたのか。
どうにも不可解だった。


「葵さん!」

『わ…!』

急に声を掛けられて、葵はビクッと肩を震わせる。

「す、すみません。集中されてたのに…!あの、おひとついかがですか?」

驚かせてしまったことにずいぶんと恐縮しながら、安田が差し出してきたのは、
おしゃれなBOXに入ったサンドイッチだった。

『良いの?ありがとう…!』

昼ごはんを取り損ねていた葵は心底嬉しそうな表情を浮かべる。

「お昼食べてなさそうでしたから…」

『バレてたのね…』

と、葵がBOXから一つサンドイッチを取り出して口に運ぶと、
ふわっと、なんとも言えない美味しさが口いっぱいに広がった。

『お、美味しい…!』

「でしょう?
これ、最近時々行く喫茶店のハムサンドを再現してみたんです。
とっても美味しくて、マヨネーズかな、バターかな、隠し味があるなぁと思って色々試して味噌にたどり着いたんですけど。

多分、アタリ、でした!」


なにやら、
米花町にあるポアロという喫茶店のメニューらしく、
非常に人気のあるハムサンドだとか。


嬉しそうにニコニコとそう話す安田に、

「え?なになにサンドイッチ?」
と神山が近づいてくる。
クライアントとの打ち合わせで外出中の茅野と白石がいないのをいいことに、
なんだか上機嫌にも見える。

ひょこっと現れた神山に、安田がしぶしぶ一つサンドイッチを分ける。

「えぇ…なんで嫌そうなの…」
「気のせいじゃないですか?」
「結城さんにはニッコニコで渡してたのに…」


2人は年も近いせいかこういったふざけたやりとりも多く、仲がよさげだ。

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作者名:white12 | 作成日時:2019年7月1日 21時

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