茅野法律事務所 ページ1
「ん…今日も良い天気になりそう」
白いカーテンを開けると、まだ淡い光が室内を照らす。
まだ眠そうな目で軽く瞬きをして、もう少し…という誘惑が襲ってくる前に、
結城葵はすぐさまベッドを出た。
2月も終わりに近づき日の出の時間も早くなってきたものの、
起床時にはまだ太陽は登りきっておらず、ベッドを離れるのには少し気合いが必要だ。
葵の勤める茅野法律事務所は、自宅からは電車で5駅。
朝のラッシュ時を少しずらすように、6時すぎに駅に向かうのはいつものこと。
事務所には、最寄り駅を出て数分で到着する。
天気の悪い日にはとても助かる距離だ。
「おはようございます」
誰もいないオフィスに声をかけ、部屋の電気をつける。
「ふぅ。えっと、確か今日クライアントが…」
駅近くで買ったコーヒーショップのカップを片手に、
今日の予定を確認する。
葵の仕事はここから始まる。
今日は、1人クライアントが来訪予定だ。
名前は、飯田礼二。
クライアントといっても弁護士で、何やら担当している弁護人が弁護士を変えるよう要求し、葵を指名してきたらしい。
葵は弁護士資格を取得して弁護士として活動し始めてから2年経ち,刑事裁判も何度も経験があるが,まだまだそこまでの実績がある訳ではない。
何より,彼女自身の信条から、必ずしも「勝ち」に拘らないため,勝率は良いとは言えないのだ。
そういう事情もあり、指名されるのはこれまであまり経験がない。
「おはようございます。今日も早いですね。」
軽く葵に会釈をしながら入ってきたのは、白石悠人。
葵の2年先輩の弁護士だ。
「おはようございます、葵さん!」
白石に続いて元気よく入ってきたのは、事務員の安田沙織。
すらっとした長身の白石の後ろにいるとすっぽり隠れてしまう小柄な彼女は、
小動物のような愛らしさがある。
ふわっと纏めたロングの髪は彼女によく似合っていた。
『おはようございます。白石さん、安田さん。一緒だったんですね』
「ちょうどエレベーターで一緒になったんですよー!」
いつものように元気な声で応える安田。
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作者名:white12 | 作成日時:2019年7月1日 21時