4 ２年の春 ページ4
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「……イ・A？」
波の音に紛れて聞こえた私の名前。
「ムン、先生…」
振り向くとそこにいたのは担任だった。
「こんな時間にこんな所で、、」
横を通った車のライトが眩しい。
怪訝そうな顔をした先生が一瞬だけ鮮明になって、また見えなくなった。
「…何があったの？」
オレンジの街灯の下に来た先生はいつもより優しい顔をしてた。
「何してるのかじゃないんですか？」
「何もしてないって言うでしょ」
「よく分かってますね」
先生との関りは古典の授業と1日2回のホームルームだけなのに、どうやら私の性格を把握しているらしい。
「担任だからね」
「…ふーん」
一人分離れた所に座って、私と同じように少し先にある海を眺める。
「寒くない？」
「とくには、」
「寒そうに見える」
何も持たないまま飛び出して来たのは間違いだったようだ。
ロンティー1枚、まだ3月の夜には耐えれない。
「…先生って意外と先生ですね」
「何それ」
肩にかかった、体温が残る少し大きなカーディガン。
さっきの私と同じ格好になった先生を見てそう言えば、先生は笑った。
「ついでに先生として言うけどさ、」
ふと先生の持っていたスマホの画面が光り、もう日付を跨いでいたことを知る。
視線に気づいた先生も画面を見た。
「…こんな時間に外にいるのは見逃せないかな」
私からしたら、先生も何してたんだって思うけど、先生は大人だもんね。
あと、
「散歩です」
「君がそう言うなら信じるけど」
「…」
「信じてもいい？」
やっぱり大人ってずるいなって
「A、」
寂しい時に限って、ここぞと寄り添ってくるんだ。
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作者名：椿 | 作成日時：2022年1月12日 15時
