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今日も今日とて暇な木曜日。これなら私焦ってバイト来なくてもよかったんじゃ…と思うぐらい。横を見れば、コーヒー豆の補充をしながら眠そうに欠伸をする蜜璃ちゃん。
本当に暇だな、と店内を見渡した時だ。カランコロンという音と銀髪の彼の姿。
あ、そっか、今日木曜日だ、と納得した私。レジに来る彼を見ながら、先にミルクティーを打ち込んでいた。
…でも、思いもよらぬ言葉に私はとっても驚いた。
「…怪我とか、なかったっスか?」
______は…?
何言ってるんだこの人、と訳が分からず首を傾げていれば彼は口を開いた。
「…さっき俺とぶつかったんで、あとこれェ」
そう言って私に差し出したのは、無くしてしまったハンドクリーム。
え、え、待って、これって…そういうこと?
「あ、の大学って」
「…鬼滅、大学の2年」
…思わず口を手で塞いでしまった。ただの常連だと思っていた彼は、大学の先輩だったのだ。
「え、あのすみません、私ちゃんと謝りもせずに」
ごめんなさい、ごめんなさいとペコペコと何度も頭を下げれば、先輩はいいから、と声をかけてくれた。
「…気にしてねェ」
「あ、ありがとう、ございます」
そっぽ向きながら、メニューのミルクティーを指差してこれで、と呟いた。
ホイップ増量ですよね、と聞けば耳を赤くしてあァ、と控えめにこたえた。
…店長は事務所で、事務作業に夢中だ。
「…ホイップはサービスです、あとこれ」
ボソッと先輩に言って、差し出したのはドリンク一杯無料券。せめてものお詫びに先輩に渡せば、目を大きく開けて、少しだけ笑って受け取ってくれた。
「…ッス」と、軽く頭を下げてミルクティーを受け取った先輩は、いつもの定位置であるカウンター席の左から2番目に。外の景色がよく見えるそこは特等席だったりする。
…先輩だったのか、知らなかった。
と、先輩を見ていればパソコンを開きながら私の視線に気づいたのか、振り向いた先輩。
慌てて思わず目を逸らしてしまった。もう一度見れば、軽く会釈して笑ってくれた。
…やっぱり、人を見た目で判断しちゃいけない。
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三月の専属ストーカーなつめみく - 宇随さんの小説でホイップ増量でェってセリフがリンクになってたから飛んでみたらいきなりさねみんがホイップ増量でェとか言ってて吹いた。 (10月25日 16時) (レス) id: ba14ff85c6 (このIDを非表示/違反報告)
蓮(プロフ) - にじさん» にじさん初めまして、コメントありがとうございます!実弥さんらしさがなかったら…と不安でしたし、皆さんが想像しやすいように描写の方も力を入れているのでそう言って頂けて嬉しいです、ありがとうございます( ; ; )今後も頑張りますのでよろしくお願いします…! (2021年2月21日 23時) (レス) id: e728655408 (このIDを非表示/違反報告)
にじ(プロフ) - コメント失礼します。蓮さんが書く実弥さんとても好きです…。こんな恋がしてみたい!ときゅんきゅんしてます…!描写も一つ一つが丁寧でとっても素敵で…これからもコッソリと更新を楽しみにさせて頂きますね。 (2021年2月21日 17時) (レス) id: 7dcf5a18d1 (このIDを非表示/違反報告)
蓮(プロフ) - パチ麻呂さん» パチ麻呂さん初めまして、コメントありがとうございます!実弥さんとの恋を楽しんで頂いてるみたいで私も嬉しい限りです!労いのお言葉までありがとうございます…!甘くしていけるよう努力してまいりますので今後もお付き合い頂ければ幸いです。よろしくお願いします! (2021年2月19日 22時) (レス) id: e728655408 (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - コメント失礼します。文章1つ1つが可愛らしいというか、恋してる気持ちになれて堪りません( ; ; )スマホ片手にジタバタしちゃうくらいキュンキュンします。これからも楽しみにしています。お体に気をつけて蓮さんのペースで更新頑張ってください! (2021年2月19日 5時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蓮 | 作成日時:2021年1月26日 21時