ホイップ増量で。【不死川実弥】

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「宇髄先輩は誰にでも優しくて尊敬します」
「昔っからあいつはああだからなァ」



トマトチーズ鍋のラストはパスタでお洒落に〆て、私たちは他愛もない日々の会話に花を咲かせていた。先輩は酒豪だろうな、と想像していたがそれを反して2本ぐらいで終了し、いちごミルクのパックに手を伸ばしていた。右党なんだろう、でもそれがどこか先輩らしい。



先輩とはいろんな話をした。将来は教員として教壇に立ちたい。部活の顧問を引き受けるとしたらバスケ部が良い。兄弟たちが自分と同じように大学に通えるように、たくさん将来は働きたい。


…彼女はいない、でも好きな人がいる。


それに対して、上手く聞き出すことも返すことも出来なくて、自分の不甲斐ないさに唇を噛んだ。



午後22時を回ってからも、話が尽きることはなく話題は宇髄先輩になった。

宇髄先輩は、とても社交的で誰にでも優しい。また気を利かせて話を振ってくれたりと、周囲を見て動けるスマートなところも彼の長所であり、それらが周りの女性たちからの視線が熱い理由だと思う。さらにはあの整い過ぎた端正な顔立ちと、高身長とくれば女性たちからの注目も自然と集まるわけだ。



「そうなんですか、さすがですね」



私とは正反対です、と笑えば返答がなく小首を傾げていれば彼の顔は茹で蛸のように真っ赤に染まっており、その顔に相応しいような言葉を紡いだ。



「俺は、好きな奴にだけ、優しくする」



そんな顔で、そんな甘い声で、そんな目で見ないで。

自分に対してかけられているのであれば、こんなにも嬉しいことはないのに、自惚れて傷つくのは自分であることに間違いはなく、私は必死に先輩の言葉を心の中で否定した。



「…じゃあ、先輩の好きな人は幸せですね、そんなに想ってもらえて」
「幸せにするよ」



幸せにしたい、ともう1度口にした断言的なそれを私は咀嚼せずに飲み込んだ。考えれば考えるほど、自分にとって都合のいいことが身体中に巡るほど、それがいつかの自分を甚振ることになる。


…期待、しない。自信がない私が、唯一自分を守る術だった。


先輩と一緒にいるのが途端に苦しくなった私は、もう遅いからと適当な理由をつけて立ち上がった。すると、当たり前かのようにやっぱり彼も立ち上がる。



「…送ってく」



優しい声色が胸にすとんと落ちて、期待しないとしながらも、こんなにも願ってしまっている矛盾した自分がいることにうんざりした。

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