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「好きだァ、木下のこと、ずっと前から。」
涙がブワッと勢いよく流れ出た。ほんのりと頬を染める先輩から紡ぎ出された言葉は、欲しくて欲しくてたまらなかった2文字だった。泣くな、と優しく涙を拭う指先は、気付けば私の頬をふんわりと包み、「木下は?」と淡い期待を孕んだ紫の瞳を私に向けた。
「木下は、俺のこと好きかァ?」
「_____好き、です」
嗚咽混じりの声を精一杯上げて、ぐちゃぐちゃになった顔で貴方を見つめれば、泣き出しそうな今にでも涙が溢れそうな顔でうんと不死川先輩は笑った。
「俺と、付き合ってくれるかァ?」
言葉にならずうんうん、と何度も頭を縦に振る。そうしていれば急に後頭部を引かれた。理解するのにそう時間はいらなかった。多少強引で、荒々しくて先輩の見た目にばっちりだったけど、触れ合うそれは驚くほどに柔らかくて温かい。
_____こんなに甘いキスは、初めてだ。
名残惜しいかのように、ゆっくりと触れ合っていた唇が離れれば、愛おしく慈しむような瞳の彼が歯に噛み髪を触った。そのまま、腕を引かれ立ち上がり彼の胸の中に包み込まれ、彼のバクバクと激しく音を奏でる鼓動を直に感じた。
ギュッと私の背中にその逞しい腕を回す先輩は、自分の背中には腕が回ってこないことを感じると、私の腕を引いた。まるで、お前もそうしろ、と言っているようで、力の限り懸命に彼を抱きしめ返した。
「苦、…しいっ」
「るせェ」
強すぎる力だけどそれさえも嬉しく、この幸せを噛み締めて、さらに1つも溢さぬよう私もさらに彼を抱きしめる力を強めた。涙があふれて止まらなくて、彼の黒いトレンチコートに染みをつけてしまったが、もうそんなの構っていられないぐらいただただ離さないで、と心が叫んでいた。
1月、冬のとある日、恋が実った瞬間だった。
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三月の専属ストーカーなつめみく - 宇随さんの小説でホイップ増量でェってセリフがリンクになってたから飛んでみたらいきなりさねみんがホイップ増量でェとか言ってて吹いた。 (10月25日 16時) (レス) id: ba14ff85c6 (このIDを非表示/違反報告)
蓮(プロフ) - にじさん» にじさん初めまして、コメントありがとうございます!実弥さんらしさがなかったら…と不安でしたし、皆さんが想像しやすいように描写の方も力を入れているのでそう言って頂けて嬉しいです、ありがとうございます( ; ; )今後も頑張りますのでよろしくお願いします…! (2021年2月21日 23時) (レス) id: e728655408 (このIDを非表示/違反報告)
にじ(プロフ) - コメント失礼します。蓮さんが書く実弥さんとても好きです…。こんな恋がしてみたい!ときゅんきゅんしてます…!描写も一つ一つが丁寧でとっても素敵で…これからもコッソリと更新を楽しみにさせて頂きますね。 (2021年2月21日 17時) (レス) id: 7dcf5a18d1 (このIDを非表示/違反報告)
蓮(プロフ) - パチ麻呂さん» パチ麻呂さん初めまして、コメントありがとうございます!実弥さんとの恋を楽しんで頂いてるみたいで私も嬉しい限りです!労いのお言葉までありがとうございます…!甘くしていけるよう努力してまいりますので今後もお付き合い頂ければ幸いです。よろしくお願いします! (2021年2月19日 22時) (レス) id: e728655408 (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - コメント失礼します。文章1つ1つが可愛らしいというか、恋してる気持ちになれて堪りません( ; ; )スマホ片手にジタバタしちゃうくらいキュンキュンします。これからも楽しみにしています。お体に気をつけて蓮さんのペースで更新頑張ってください! (2021年2月19日 5時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蓮 | 作成日時:2021年1月26日 21時