Where is She？〜Donghae〜

07:黒い感情〜dh〜 ページ7

*



何度となく誘われたダブルデートをなんかと理由を付けて断って。


もう忘れよう、そう思ってた時＿＿


その日は朝から雨で、時折雷が激しく鳴り響く悪天候だった。


「あ〜、そっか〜、一人で大丈夫？」


リビングに行くと、ヒョンが誰かと話してるのが聞こえた。


「そうなんだ。今日は夜まで抜けられそうになくて…」


誰と話してるかなんて聞かなくても、ヒョンの顔つきでわかる。

一語一句聞き逃さないように聞き耳を立てながらキッチンに向かう。

冷蔵庫をそっと開けて冷たいミネラルウォーターを取り出して
飲みながらヒョンを見るとこちらに気付いてニコリと笑う。


なんだよ、その笑顔は。

余裕ぶってるのか？

そんな風に卑屈になってしまう自分が嫌で、
飲み干したペットボトルをぐしゃりと握りつぶした。


「じゃ、気をつけて。うん、愛してるよ」


また……
塞がりかけた心臓がばっくりと割れて、中から真っ赤な血がどくどくと流れだす。


いつになったら、この傷は癒えるんだろう。


いや、本当は、癒えなくてもいいと思ってる。


ずっとずっと、この傷が生々しく血を吐いているうちはまだ
オレが彼女を好きという証で。


それを忘れてしまったら、オレはオレではなくなる気がしてた。


「ヌナ…なんだって？」


本当に聞きたいのか、聞きたくないのか

もうそんなこともわからないほど、神経が麻痺してる。


「ああ、なんか今日新しいケーキの試作品作るらしくて
材料買いに行く約束してたんだけど俺急に仕事入っちゃって無理なんだ」

「この雨に？」

「ああ、そうなんだよ」

「ナナは？」

「ああ、なんか実家の法事とかでいないんだと。
なんだよお前ら付き合ってるんじゃないのか？」

「別に…」

「ナナちゃん、寂しがってるんじゃないのか？たまにはデートに誘ってやれよ」

「……」


悪気がないことはわかってるけど…
無神経とも思えるヒョンの言葉にむかつきを覚えて無言で部屋に戻った。


乱暴にドアを閉めてベッドへ体を投げ出す。


目を閉じて、その上から両手で押さえても浮かんでくる彼女の笑顔。

なぜヒョンのものなの？

なぜオレのものじゃないの？


たった一度でいい。

オレのためだけに笑ってほしい。

たった一度でいい。

この手で、抱きしめたい。



オレの方が先に見つけたんだよ。

ヒョンが知らない、彼女を知ってる。


なのになぜ＿＿オレじゃないの？


そんな黒い感情が、オレを動かしていた……



*

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