29:特別な日 ページ29
*
ジョンスに促されて降り立つと、田舎者の私でも知っているような立派なホテルの入り口で。
「え…ここ？」
「はは、びっくりさせちゃったかな？」
「こんなとこ、場違いだよ…」
「いいからいいから、さ、行こうか。お姫様」
「あ、ジョンス…」
手を引かれ、ふかふかの絨毯に足を踏み入れた。
"オシャレしてきてね"とは言われたけど、まさかこんなところだなんて…
「いらっしゃいませ、お待ちしておりました」
「ありがとう」
レストランでは恭しく出迎えられて緊張で顔が強張る。
「緊張しなくても大丈夫だよ、個室になってるから。
なんなら裸足になったっていいんだよ？」
そんな風に、緊張をほぐす様な言葉も今の私には申し訳なさで苦しい。
「こちらです」
通されたのは、入り口からすぐ脇の通路を入った個室で。
重い扉が開くと、部屋のあちこちに飾られた真っ赤な薔薇が淡いキャンドルの灯りで照らされて美しく揺れていた。
『ヌナ…』
その薔薇を見た瞬間、あの日のことがフラッシュバックする。
激しい雨と雷鳴の中、本能のままにﾄﾞﾝﾍに抱かれた夜。
体が竦んで、一歩も進めない。
「A？大丈夫？ほら、座って？」
「あ、あの、ジョンス…」
少し強引に背中を押され、2人にしては広すぎる部屋の中央のテーブルに座らされた。
「さ、たべよ？」
「……ええ…」
そのあと運ばれてきた料理も飲み物も、今まで食べたことのない様なものばかりで。
だけど、そのどれもが喉を通らない。
「どうしたの？ほとんど食べてないけど、不味かった？」
「そんなことないよ！ただ、私には高級過ぎて…」
「はは、実は俺も。やっぱこういうとこは場違いだったかな」
見ると、ジョンスもほとんど手をつけていない…
彼もまた、緊張してる？
なぜ今日、こんな特別な事を？
「ねえ、A。今日がなんの日か知ってる？」
「え…？」
「…やっぱり知らないか。今日は俺たちが付き合い始めて100日目だよ」
え…そう、だったんだ…。
「…ごめんなさい。そういう事、疎くて…」
「いいよ、気にしてない。Aのそう言うとこ、俺は好きだよ」
「……」
言わなきゃ…
これ以上、こんな優しいジョンスを欺く事は出来ない。
そう思うのに、言葉が出てこなくてただ俯くしかできない。
「それでさ…」
カタリ、音がして。
立ち上がったジョンスは私のすぐ横に来ると私手を取り、跪いた。
そう、あの日のように。
*
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りゅう(プロフ) - さくらこさん、ステキなお話をありがとうございました♪ブラックドンヘ？？と思いながら読み始めましたが、ステキなラスト♪ほんまにさくらこさんのドンヘをはじめとするメンバーへの愛が溢れてました♪またお話楽しみにしてます♪暑いからお身体ご自愛くださいませ♪♪ (2015年8月7日 15時) (
レス) id: 8614525c3d (このIDを非表示/違反報告)
さくらこ(プロフ) - ちかさん» ちかさん、コメントありがとうございますm(_ _)mトゥギもドンヘも実際どんな感じなんだろう…妄想の中だけでも、こういう人なんだと思いたいですよね〜。これからもたのしんでいただけるように頑張ります！ (2015年8月1日 11時) (レス) id: c51219206a (このIDを非表示/違反報告)
さくらこ(プロフ) - よぅちゃんさん» よぅちゃん、コメントありがとうございますm(_ _)mコメント欄がトゥギを偲ぶコメントで溢れて…いつかちゃんとトゥギも幸せにしてあげなきゃね^^; (2015年8月1日 11時) (レス) id: c51219206a (このIDを非表示/違反報告)
さくらこ(プロフ) - さるるんさん» さるるんさん、コメントありがとうございます！お、さるるんさんのお話読ませていただいてますよ！嬉しいいです！ (2015年8月1日 11時) (レス) id: c51219206a (このIDを非表示/違反報告)
さくらこ(プロフ) - まゆまゆさん» まゆまゆさん、コメントありがとうございます！レス遅くなってごめんなさいm(_ _)mトゥギは私のお話の中でいつもこういう役回りなのでちゃんと幸せにしてあげないといけないですよねwwいつかトゥギも書けるかな^^; (2015年8月1日 11時) (レス) id: c51219206a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さくらこ
| 作者ホームページ：http://id41.fm-p.jp/390/cherryhae15/
作成日時：2015年5月26日 15時
