大人になったら 【JK】

愛し方は人それぞれ。３ ページ32

「爆イケすぎるもう無理やってらんない」



うわああああああ、ってやけ酒飲みながら、店長に冷たい目で見られる私は、



アイドル、チョンジョングクを応援し始めて早５年。




彼らとの仕事が一区切りついて会わなくなってから、



いや別れてからジョングク不足で日々インターネットで動画をあさり続けては後悔の念が押し寄せてくる。





彼を抱いてなければ、こんなに恋しくなることはなかったんだろう。




だけれど、だけれど、





あれを目の前にして手を出さない女がどこにいるというのか。



私の前に現れてほしいね！



この歳でアイドルに落ちるなんてもう人生詰んだにも等しい。




毎年実家に帰るたびに両親に彼氏を連れてこい孫の顔見なきゃ死 ねないだの言われて、



しかし帰省のときだけではなく、母から電話が来るたびに彼氏に会わせろだのなんだの言われて、最近はお母さんの名前がスマホの画面に表示されるたびに過呼吸になりそうになる。






彼氏？私は今アイドルを追っかけるのに忙しいんだ！！！！



なんて言えず。




３５になって、さすがに焦り始めてはいるが、とりあえずジョングクの動画などを見て現実逃避しているのが現実だ。





「店長、もう一杯！」



今日はジョングクがとんでもない動画をYTに落としてくれた。




それにひたすら頭を抱え、飲んでなきゃやってられないと思い、現在に至る。




店長は私がドルオタを極めてるのを理解していて、最近では悟ったような目で見て来る。




こいつ婚期逃したんだな、




アイドルに逃げたんだな、って。





痛いよ、その冷たい目が私の心に染みるよ。





何はともあれ、お酒は飲み過ぎに注意すべきである。




「うわあああうおおおおお」




って、トイレで吐く始末だ。




「気持ち悪い…」



吐いても吐いても湧き上がる吐き気に嫌気がさしていた頃、トイレの扉から、ノック音が聞こえた。





「すみませーん、ケンチャナヨー？」


若い男性の声がして、やばいと思い立ち上がって水を流す。




「あ、ごめんなさい！今出ます！」


便座を消毒して、口をうがいしてから身だしなみを整える。



扉を開けながら、


「ごめんなさい、閉じこもっちゃって」



と出ると、




「Aさん…？」



なんてさっきまでスマホの中にいた彼が目の前にいた。

２→←５

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す