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「違う」
私は口を動かした。
またも拳に力がはいる。
「自分の命もそりゃ大切だよ。だけど同じくらい自分と同じ時間に生きている人の命も私にとってはどっちも大切なんだよ。生きて売る以上、私たち『ヒト』はそうやって今を生きていくしか道は無いんだよ」
「……ッ」
「お互い助け合っていくしか私たちは生きていけない。『心』を持ってしまった時点で私たちは人と人とで繋がって生きるしかない。仲間が間違った道を行ってしまったとしたら、その時は私たちがその人にそっちに行ってはいけないと、怒ってやらなくちゃ」
明石さんは私の言ったことに何も言わなかった。
下に首を傾け、動かない。
今、彼がどんな顔をしているかは分からない。
怒ってるのか。はたまた何も感じなかったのか。
私には分からない。
ただ、私が今できることは彼が次口を開くその時まで待つこと。
だったのだが__________
「なぁ、俺あんたに話したいことがあるんだけど……国行が何も言わないなら俺が言っていいか?」
声の主は赤い短髪の子。
そしてその子は傷だらけの体で精一杯立っていた。
「国俊⁉」
今にも倒れてしまいそうなヨレヨレな体を明石さんが間一髪で受けとめる。
支えられた彼は「悪ィ国行」と謝った。
そのまま赤い髪の毛の少年は支えられながら話を進めてきた。
「あんたは多分、とても恵まれて生きてきたんだと思う」
私は恵まれた。
それは別に嫌な気分になるものでは無くて、素直に、普通に喜んで貰っていい言葉。
だが、彼の言った言葉を聞いていると、何故か私は悲しい気持ちになってしまった。
あんたは恵まれて生きてきた。ということは逆に彼は恵まれて生きてきていないと言っているのと同じである。
私はそのまま、話を聞いた。
「俺がここに顕現された時、ここはもう地獄のようなところだった。俺みたいな短刀は審神者にとっては弱い存在で見向きも歓迎の言葉も挨拶すら無かった」
心の底から酷いと思った。
自分が命を吹き込んでまで、この世に顕現させたのに挨拶の一言も何も言わないなんて。
そんなの酷すぎるよ。可笑しいよ。
「歓迎されるのは太刀や大太刀ばかりで俺たちよりも大きい刀だけだった。俺はここに生きてちゃ駄目な刀だったんだ………………」
そんなの酷い。そんなの可笑しい。そんなの馬鹿げてるよ。
私は腹の奥底から大きく「馬鹿野朗ううううう」と言った。
とうとう私は自分の堪忍袋の尾が切れてしまった。
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乃愛(プロフ) - それは心折れるね……辛いな…でもきっと夢主なら救ってくれるよ!安心してほしいな…更新お疲れ様です! (2023年4月6日 21時) (レス) @page42 id: 3b02df20c8 (このIDを非表示/違反報告)
さら - おかえりなさい!!更新してくれて凄く嬉しいです!!このお話大好きなので、待ってました!!ありがとうございます!!続きも楽しみにしてます!!頑張って下さい!! (2023年4月6日 1時) (レス) id: f9b4a84be1 (このIDを非表示/違反報告)
小関蓮(女)(プロフ) - 乃愛さん» コメントありがとうございます!数年前から始めた小説ですが見つけて頂き、しかも一気に読んでいただいたこととても嬉しいです^ ^ ゆっくりになりますが頑張って小説投稿いたしますのでよろしくお願いします。主ちゃん褒めていただいて感無量!! (2023年4月5日 21時) (レス) id: ec8ad34bcc (このIDを非表示/違反報告)
小関蓮(女)(プロフ) - テトさん» 1周年のお祝いありがとうござます!っと言いながら何年経ったのでしょうか…小説の更新が遅くなってしまって申し訳ないです。私の諸事情でログインできずに何億光年もの時が過ぎましたね。あの頃に書きたかったお話があるのでぼちぼち小説を投稿していこうと思います^ ^ (2023年4月5日 21時) (レス) id: ec8ad34bcc (このIDを非表示/違反報告)
乃愛(プロフ) - コメント失礼します!面白くて一気に読んじゃいました!私逆ハー大好物なので嬉しいです!刀剣男士全員推しなので嬉しいです!私この小説がきっかけで刀剣乱舞始めました!更新頑張ってくださいね!夢主の性格めっちゃ好きです!この小説も大好きです! (2023年4月5日 20時) (レス) id: 3b02df20c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆるゆる | 作成日時:2018年1月4日 10時