… ページ10
慧side
大ちゃんの手を引いて、数分ほど砂浜の上を歩いていく。
近くのカップルが、掬った砂をほろほろと溢していた。
慧「もうすぐ着くよ」
大貴「ここは…洞窟？」
慧「そう。」
あたりはもう既に真っ暗なのに、俺たちの他にもちらほらと観光客が見える。
大貴「人、いっぱいだ」
少しだけおどおどする大ちゃんは可愛かった。
多分、人の多い所が苦手なんだろう。
慧「あ…」
無数の光が放たれたように宙に散っている。
黄色と緑を混ぜたようなそんな色が俺らの周りに沢山。
大貴「すっげー眩しい。なぁにこれ？」
慧「蛍。すっごく綺麗なの」
大貴「そうなんだ、俺には白にしか見えないけど…いのちゃんが言うならきっとすっごく綺麗だね！」
その寂しそうな横顔。
笑っているのに、笑っていないような。
かえって大ちゃんに色が見えない事実を突きつけているような旅にしてしまった気がする。
慧「ごめん…帰ろうか。」
普通の人間が綺麗だと思える光景。
それは、やっぱり色が見えているからだと思う。
色は、沢山のことを魅力的に見せてくれるから。
その色を失った世界に生きる大ちゃんに、この景色を見たいだなんて、俺、最低だろ。
大ちゃんの手を引いて、そのまま一言も発することはなく、大ちゃんの家の前まで辿り着いてしまった。
大貴「ありがとね、いのちゃん！」
にこりと白い歯を見せて笑う。
慧「ん、ごめん。色が見えないって分かっててさ、ああいう場所に連れていくって、俺、結構酷なことした。」
大ちゃんの手が俺の肩にポンっと乗った。
大貴「色が見えなくてもさ、綺麗な場所な行けたこともいのちゃんと行けたことも何一つ変わらない事実じゃん！俺はそれが嬉しい。だから、ごめんとか言わないで。楽しい思い出なんだよ？」
あぁ、そうか。
色なんかじゃなく、もっといろんな、他のことに価値を見出してるんだ、大ちゃんは。
悲しい事実を受け止めさせ、更にその思い出までも悲しいものさせようとしていたのは俺だ。
慧「うん…そうだよね。ありがと、大ちゃん。今日は遊べて本当に良かったよ。」
大貴「うん。俺も！」
慧「じゃあ、またね？」
俺が手を振って、大ちゃんに背を向けて歩き出す。
もう一度振り返ると、大ちゃんは相変わらず笑って手を振っていた。
君と遊べるのは、あと何回だろう___？
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 241人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「Hey!Say!JUMP」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
のん - アオイヨルさん» ありがとうございます！何卒よろしくお願いいたします！これからも更新楽しみにしています♪頑張って下さいね☆ (2021年6月8日 9時) (
レス) id: cf51685787 (このIDを非表示/違反報告)
アオイヨル(プロフ) - のんさん» のんさん、お久しぶりです。大好きと言っていただけて、光栄です。新作の提案、ありがとうございます。是非、検討させていただきますね。 (2021年6月7日 20時) (レス) id: 64f54fb5df (このIDを非表示/違反報告)
のん - アオイヨルさん» アオイヨル様に、だいぶ気が早いですが、新作の提案です！リアル設定で、大ちゃんの精神系が読みたいです！子役の頃から頑張ってきた彼。周囲に気を使い過ぎてとうとう心が限界を迎えてしまう的なのが読みたいです！ご検討よろしくお願いします！ (2021年6月7日 18時) (レス) id: cf51685787 (このIDを非表示/違反報告)
のん - アオイヨルさん» お久しぶりです！私、有岡君のこういうお話、大好きです♪次回の更新を楽しみにしております☆ (2021年6月7日 18時) (レス) id: cf51685787 (このIDを非表示/違反報告)
アオイヨル(プロフ) - ゆきうさぎさん» お久しぶりですね。コメントありがとうございます…！うまく書けるかわからないですけど、よろしくお願いします。 (2021年6月6日 16時) (レス) id: 64f54fb5df (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：アオイヨル | 作成日時：2021年6月6日 12時
