Dyed white

さよなら ページ38

大貴side

慧「…またね」






大貴「待って！待ってよ！」









それは突然のことだった。









屋上で空を見上げた翌日の夜。









モノクロの病室の中で、騒がしい機械に包まれて、ベッドに吸い込まれるかのように横になっている君。








心電図のモニターは、いのちゃんの体が悲鳴をあげていることを示していて。









ぎゅっと手を握ると、薄ら目を開けてくれた。








“またね”









____そう言ったきり、もう二度と目を開けてはくれなかった。









どうして、神様。








あんなに真面目で、優しくて、お兄ちゃんで、







弱音ひとつこぼさない、いい子な彼の命を奪っていってしまったんですか？









親の期待に応えようとするいのちゃん。









親に見捨てられたとわかっても、愚痴を溢さず生きたいのちゃん。









弟を可愛がるいのちゃん。








弟への罪悪感、後悔、それはいのちゃんを確かに苦しめていた。








でも、前を向いていた。








生きていて欲しい、そう願った彼の人生は、たった17年間で幕を下ろした。









光「…にいちゃん？」








その声に振り向けば、ドアの近くに、光くんが立っていた。







そのまま走ってきて、体温を失いつつあるいのちゃんの手を握った。








光「なんでっ…」








大きな瞳からほろほろと零れ落ちる涙。








視界が滲むのは、俺も泣いているからで。









鼻を啜り泣く声が、無機質な病室に響き渡る。









華奢ないのちゃんの手を涙が静かに濡らしていた。

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