【d!】翡翠葛【短編集】 (ページ8)

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【漆黒】黒薔薇※ ページ8

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軍服を身に纏って事務仕事をしていた女性は万年筆を机上に置いて身体を伸ばし、机上にあるフォトフレームをチラリと見遣って笑みを零す。

フォトフレームに丁寧に飾られている写真は、女性と金髪の見目麗しい男性が仲良く並んでいる写真だった。2人共軍服に身を包んでおり、階級章から男性は総統、女性は幹部と分かる。

女性は書類を持って立ち上がり、書斎を出た。女性は暫く歩いて一際絢爛豪華な扉の前で立ち止まり、ノックする。

「入っていいゾ」

女性はバリトンボイスに聞き惚れながら重厚な扉を開き、部屋に入った。

『総統閣下、こちら請求書です』

「最近内ゲバの被害が酷いな」

写真に写っていた男性は楽しげに笑いながら女性から請求書を受け取り、徐に立ち上がった。

「A、つい最近新しく茶葉を買ってな。偶には夫婦2人でのんびり過ごそうじゃないか」

Aと呼ばれた女性は夫婦という単語が男性の口から出た事に目を見開いた後、頬をほんのり赤らめる。男性はAの反応を見て満足気に頷き、棚から茶葉と茶菓子を取り出した。

「茶会好きのお墨付きだから、絶対美味いゾ」

『お墨付きなら美味しいだろうけど、仕事がまだ残ってるから今日は無理よ』

Aは苦笑しながら断るものの、男性はAの言葉を無視して茶会の準備をする。それを見てAは諦め、大人しく椅子に座った。

男性は机に紅茶と茶菓子を置き、Aの向かいに座る。

『ん、この茶菓子とっても美味しいわ。グルッペン、この茶菓子何処の店の???』

「あぁ、その茶菓子はだな＿＿」

グルッペンと呼ばれた男性は、嬉々として語り始める。Aはグルッペンの話に耳を傾けながら、紅茶を嗜む。

2人で茶会を始める事かれこれ30分。突然Aが苦しみ始め、血反吐を吐く。Aの血が、机や床をどんどん汚してく。

『ど、く…???』

困惑しながらAはグルッペンを見て、背筋を凍らせる。グルッペンは恍惚とした表情をしながらAを見ていたのだ。

『グルッ、ペン…???』

「トリカブトを致死量入れたのにも関わらず、30分して漸く効き目が現れるとはな」

グルッペンの言葉で、Aは毒を盛った人物がグルッペンなのだと理解した。もう喋る事も出来ず、意識が朦朧とする中Aはどうしてだと目で語る。その瞳を見てグルッペンは邪悪に笑った。

「そんなの決まっているだろう。お前を完全に俺の物にする為だ」

怒りと悲しみの中、Aは息を引き取る。