【d!】翡翠葛【短編集】 (ページ6)

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【本紫】玻璃茉莉ページ6

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昼休み、学校の屋上の柵に凭れ掛かってパックのオレンジジュースを飲む女子生徒。その女子生徒の表情は浮かなく、薄らと熊が出来る程何かに思い詰めている様だった。

「A、何か悩みでもあるんか???」

同じく学校の屋上の柵に凭れ掛かってスマホを弄っていた男子生徒が、女子生徒の様子に気付いて声を掛ける。Aと呼ばれた女子生徒は男子生徒をチラリと見遣り、暫し悩んだ後に覚悟を決めたのか男子生徒を見詰めた。

『ショッピさ、ストーカー被害の定義って何か知っとる???』

「……はぁ???」

ショッピと呼ばれた男子生徒は、脈絡がない質問に思わず素っ頓狂な声を上げる。あまりにも可笑しな声だったので、Aは先程までの思い詰めた表情から一転して大爆笑し始めた。

「今後一切相談乗ってやらんぞ」

『ごめんごめん。幼馴染の仲やろ、許してーや』

へらへらと笑うAを見てショッピは深く溜息を吐いた後、顎に手を当てて考え込む。

「まぁ、プライバシーを侵害された時点で被害に遭っとるんちゃうか。で、Aがそんな事を訊いてくるって事は、ストーカー被害に遭っとるって事やろ」

『多分、ね。最近下校中偶に跡をつけられたり、自室で視線感じたり』

ショッピはAの話を聞いて、顳顬を抑えながらもう一度深く溜息を吐く。Aはショッピの様子を見てか細く謝った。

「何でAが謝んねん。取り敢えず、今日から登下校俺と一緒な」

ショッピの唐突な話に、Aは吃驚する。ショッピはそれを無視し、つらつらとストーカー対策を述べ始めた。Aは最初こそ驚いたものの、ショッピが一通り語り終わった時には笑顔を見せていた。

『ありがとう、ショッピ』

「別にええよ。今度Aの部屋で遊ぶ時、カメラないか一緒に捜すで」

Aはショッピの言葉に頷き、昼休み一杯ショッピと談笑する。Aの表情が晴れやかな表情になった事にショッピは安堵した。

『あ、そろそろ授業始まってまうわ!!!ショッピ、急がな遅刻するで!!!』

スマホで時間を確認したAが、慌てて扉に向かって走る。ショッピはAの急かす声に雑に返事をして、スマホを弄りながらゆっくりと扉へ向かう。

「ほんま、阿保やなぁ…」

道中Aの危機感のなさと自身への圧倒的信頼に、ショッピは思わず微笑みながら呟き、スマホの録音ボタンを押す。そして録音した一連の会話をA専用のファイルに大事そうに保存した。