【d!】翡翠葛【短編集】 (ページ2)

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【黄蘗】金糸梅ページ2

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チカチカと切れかかっている蛍光灯以外の明かりがない地下牢に、ベッドの上で蹲る1人の女性。その瞳からは光が徐々に消え失せており、生気がない。

地下室にゆっくりと階段を降りる音が反響し、女性は顔を上げる。地下室の扉が不快な音を立てながら開かれ、地下室に男性が入った。男性の足取りは軽く、機嫌が良いのが一目で分かる。

「A、ただいまー。俺が居らんくって寂しかったやろ〜」

Aと呼ばれた女性は視線を男性に向ける。男性は牢の鍵を開けて牢内へと入り、Aに口付けをした。男性は満足したのか、太陽の様な明るい笑顔を浮かべる。

『シャオロン、おかえり。シャオロンが居なくてとても寂しかった』

抑揚のない声で返事をするAを、シャオロンと呼ばれた男性が抱き締めた。Aが抱き締め返せば、シャオロンは一層嬉しそうに笑う。その姿は愛らしい小犬を思わせ、犬耳と尻尾があるように感じる。

「あのな、俺そろそろAにご褒美あげようと思うんよ。ご褒美何がええ???」

Aから離れて微笑みながら言うシャオロンに、Aは目を見開く。希望を見出したかの様な表情を見せ、瞳に消え失せていた光が徐々に戻る。

『そ、外に出てみたいんだけど、ダメかな』

勇気を出してAが言うものの、シャオロンからの返事はない。重い沈黙が続き、Aは焦った。突然の逃げ出せるチャンスに気が急いてしまったと、Aは後悔する。

「何で外に出てみたいん???」

Aが後悔していると、シャオロンは明るい調子で訊く。しかしシャオロンの表情は笑顔ではあったが、目が一切笑っていない。Aは言葉を間違えたら何をされるか分からないという恐怖心で、視線を彷徨わせながら必死に言葉を考える。

『シャ、シャオロンとデートしたいなぁって。外の空気とか吸いたいし、太陽も浴びたいなって思って』

「デートなら家でも出来るやろ」

シャオロンの低くて圧がある声に、Aはびくりと肩を跳ねさせた。恐怖心がAの心を埋めていくが、言ってしまったものはもう遅いと覚悟を決める。

『ここだと外の空気を吸う事も出来ないし、太陽だって浴びれな、い、から……』

身が竦む圧で、Aは言葉を飲み込む。シャオロンはそれに満足した様で、元の太陽の様な笑顔を見せた。

「外の空気なんて吸わんくても生きていけるやろ???それに太陽なんか俺が居るからええやんな!!!」

そう言って、シャオロンはAを強く抱き締める。