色付き7つの診療室【J西】 (ページ10)

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発熱【紫】ページ10

紫 said

いつもアホとか言われてる濵田やで。俺の仕事は流星や大毅の後、副作用や固定によって硬くなった身体を不自由なく生活できるようになるまでに回復させる仕事だ。リハビリが終わるとすっごくええ顔でお礼を言ってもらえるから、とてもやりがいを感じるねん。毎日いい状態になっていく患者さんを見ると、今日もがんばろってなるねんけど、最近感じ始めた自分の身体の異変。いや原因はわかっとんねん。最近入った高校二年生の患者さん。男子高校生とトラックの衝突。相場なら重体まで落とされるような事故やってんけど、全治半年の骨折で済んだのは奇跡に近い、この男子高校生はサッカー部で半年後に引退試合があるみたいねんけど、さすがに今の状態は無理や、とあきらめざるを得なくなってるねん。

その男子高校生の何がかかわってんねやろ、と思うかもしれんやん？男子高校生特有の反抗期というか、人生で一度しかない”青春”を奪った事故が憎くて憎くてしゃあないんやろうな、一回一回のあたりがとても強い。俺は疲れをうまく取れない症状があるもんで無理は禁物だとよく言われてきた。俺は青春を医師になるって理由をつけて逃げてきた人間やから、この子の気持ちちょっとしかわからんけど、それでもモノやヒトに八つ当たりしていいわけではない。俺が見てきた患者は、もうすぐで元に戻ると希望に満ちた人ばかりやし、メンタルサポートなんてかっこええことできひんけど、少しでも前を向けるようになれたらええな。

「佐藤君、今日は足元でボールに触れてアキレス腱と足首の関節をほぐすで。」

オレンジのゴムボールを足元でコントロールするよう指示する。やはりなかなか戻らないようでボールはあちらこちらをころがる。段々イラついてきたようで顔がゆがんできた。もう痛くはないみたいやねんけど、なんせ不機嫌やねんなー。自分の体が疲れを感じとる。この後仮眠室で少し休もかな、なんて思ってると突然大きな声が聞こえた。しまったと思った時にはもう遅く、何とかバランスを取ろうとあしをうごかすけど、ふらっと来ためまいにあらがうのができず、倒れてしまった。すぐ起き上がろうとするも体が起き上がらない。

「大橋、神ちゃんか、長尾呼んできてくれへん？」

異変に気付いて駆け寄った大橋こと、大橋和也に応援を頼む。ちなみに長尾とは神ちゃんと一緒に内科医をしている長尾謙杜のことだ。

「濵ちゃん！」

飛んできた神ちゃんに安心した俺は目を閉じた。