色付き7つの診療室【J西】 (ページ8)

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緑 side

流星ものんちゃんも、淳太も照史も濱ちゃんも、みんなみんな恋愛上手なんやな。俺とシゲは、お世辞にも上手いとは言えへん。俺もシゲも特に忙しいから、お互いの時間を取れることなんて滅多にない。いつか来る終わりが怖くて、別れが苦しくて、八方塞がりな恋をしている。俺らはきっと、進展もないままこの関係が過ぎてく。いつかシゲは目がぱっちりとした小顔で、そこそこある柔らかい胸に対してすらっとしたような、魅力的な女性と付き合って、結婚するんやろうな。

全部が羨ましくて、自分に無いものを求めてしまう強欲な俺やから、きっといつか本当に嫌われてまう。もっと頑張らな、ずっと好いてもらえるなんて思い上がっちゃあかん。このバレンタインで、もう1回惚れ直してもらって、また定期的に頑張らんと、彼女で居続けられへん。

淳「神ちゃん、？」

「んぁあ、頑張ろうな。」

絞り袋から出てきた同じ大きさ同じ厚さの記事の表面も触ってもつかなくなり、計算され尽くされた設定温度になったオーブンに入れる。焼いている間は乙女みたいに恋愛トーク。マシュマロを溶かした高カロリーココアはバレンタインの今日だけ。指先を伝う熱と喉を通る熱が身体を熱くする。

望「ヘタレな彼氏持つと大変やな、神ちゃんは。」

淳「ホンマやな、でも面倒見いい神ちゃんは丁度ええんやろ。」

「せやな、そういうのも好きやけど、やっぱ惚れた弱みなもんで、何しても好きやねん。」

望「惚気けるなしっ！」

淳「望も好きなんやろ？結局は」

望「そらそうや！かっこええし、ずっと好きって言うてくれるから、きっと一生嫌いになれへん。」

「ええな、。」

望「神ちゃん……？」

「さぁて！どんな焼き加減になっとるかなぁ！」

ピンクと茶色と白のマカロンが焼き上がる。いちごとショコラとプレーン。絞り袋から出る艶やかなガナッシュ。マカロンを送る想いは、「あなたは特別な人」らしい。のんちゃんが笑顔でスマホの記事見せてきた時、ええな、と思ったけど、流星もしげも鈍感やから、きっと気づかれないよな、なんて思ってた。

淳太もやっぱ寝れんかったみたいで、カウンターチェアーに腰をかけて話しながらお菓子を作った。日が登ったら、また病院に行く。今日しげにマカロンを渡せる自信が無いから、のんちゃんに頼み込んでしげに渡してもらうことにした。最後まで嫌やって言ってたけどな。

マカロンを送る想いに気づいてくれたかは次のページで。