色付き7つの診療室【J西】 (ページ36)

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凄腕麻酔科医ページ36

黄 side

今年の9月、小さめの人事異動で神山総合病院に来てくださったのは、2人の麻酔科医だった。名前は浜中文一、室龍太。実は俺らと同じ大学で同じ代のため、2人が東京で最新の医療を学んでいる間もこまめに連絡を取りあっていた。室が上京する時、まだ学生だった向井康二もついて行くと言って聞かなくて飛び立って言ったが、今は向こうで居場所を見つけて、人を助けているらしい。

浜中文一は一言で言うと天才肌。患者をひと目見るだけでどの麻酔をどのくらい投与するのかが分かってしまう。ちなみに、正門をうちに引き込んだあの手術で麻酔を担当していた。変わり者と言われることはあるが、最後まで正門の責任は軽いと主張し続けた。末澤、リチャードとも関わりがあり、末澤の近所の兄さんらしき関係性で、医療業界でどう生きるべきなのかを教えていたらしい。リチャードは研修先にいたらしく、いじったりするくらいには仲がいい。

室龍太は医師国家試験に3回落ち、国試留年を2回繰り返した、ある意味大物だ。しかしそれだけ長くの期間勉強したこともあり、今解けと言われれば1番正答率がたかいだろう。ちなみに向井康二とは昔から仲が良く、東京に言ったばかりの少しの期間はルームシェアをしていたらしい。俺らの中ではツッコミを担当していて、かなり面白いやつだ。

「久しぶりやな！」

「室も文ちゃんも久々やなぁ。」

「今日歓迎会するから俺らん家な！」

「正門は元気にやっとる？」

「元気に恋しとるで。」

「あら、だれなん？」

「末」

「よう知ってるやつとは思わんかったわ。」

「まあ、後で話そうや。」

ちなみに今回こちらに来たのには、人事異動とあとひとつ理由がある。

「今度のシゲの手術、俺らが麻酔をする。」

「さすがに大きすぎる手術やから、神ちゃんも手元に集中したいやろうしな。」

「あと、東京の大学病院堅苦しくて嫌なんよ。」

シゲと神ちゃんが執刀医のその手術は、正門がこちらに来たきっかけの手術と同じ術式のものだ。全国各地から外科医が押し寄せ、二人の手術を見ていく。これが成功すれば、神山総合病院は、俺らが通った大学と提携し、大学病院へと移り変わる。

「まぁ、大学病院になったあとにも、ここにいる価値があるもんな。」

「神山先生には頭上がりませんわ。」

「そういえば小瀧と流星、シゲと神ちゃんに結婚祝い持ってきたんよ。」

「今日は神ちゃんはよ終わらせる言うてたから、後で渡してやって。」