色付き7つの診療室【J西】 (ページ24)

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赤 said

オペ室に入ると、院長先生(神ちゃんの爺さん)が見学んとこで鎮座してるのが見えた。神ちゃんの顔も強張る。俺は神ちゃんの目を見た、そういや、こんときは未だ付き合うてなかってんな、３年前の話やから。患者を挟んで、神ちゃんと目を合わせたとき、なんかわからんけど、行けるって思ったんよな、この患者救えるって。案の定その手術は大成功で後遺症もなく退院することができた。その２日後やな、俺が院長先生に呼ばれたんは。そん時に院長先生から外科Ⅰを任せてもらえるようになった。思った以上の大出世なんよ。翌日朝、足元に切れた緑のミサンガ。明らかにハサミの跡があるから、きっと神ちゃんが切ったやつやな。でもそれ以上に神ちゃんが尽くしてくれることがうれしかってんな。

西「重岡先生？ぼーっとしてどうしはってんですか？」

「ん？あぁごめんな？」

西「俺は別にええんですけど、」

「そういや、大吾はなんで俺と神ちゃんが付き合うてんの知ったん？」

西「この前のんちゃん先生と藤井先生と流星と飲みに行ったときにいってはったんですよ。」

「小瀧と流星かい。」

西「そういや、藤井先生プロポーズするらしいですね。」

「何でも知ってるやん。」

こいつ作戦は大丈夫なんかと思っているとチャイムが鳴った。総合病院なんに今日は患者さんが少なかったなぁなんて思いながら事務作業を終わらせる。夕方は暗くなんの早いからな、とちょっと歩いたとこにある月極駐車場まで大吾と二人で歩く。車を走らせ大吾と他愛もない話をしながら走る一般道は、バレンタインほどではないが、この季節特有の雰囲気がした。

西「何買うたらええんですかね。」

「俺センスないけどな、」

西「重岡先生は何買うんです？」

「たっかいチョコレート菓子やで、神ちゃんは甘いもん大好きやからな。」

結局デパートの特設されたホワイトデーの洒落たお菓子コーナーで二人でチョコレートを買った。見られへんようにって俺の車に隠して、大吾を院内寮まで送った。車の中で小さな電気つけて、青の便せんに文字を綴っていく。いつもの医者の神ちゃんとばっか話しとるから、この時はともの彼氏としてすべての想いを書いていく。まだ２年目、しかも付き合ったタイミングもロマンチックのかけらもなかったな。神ちゃんにこれ以上無理させたなくて、強制的にベッドに倒して思いを押し付けるように伝えた。あの時の顔と締め付けるような心の内は絶対忘れへんと思う。