お狐様と裁判所 ページ43
≪九尾狐≫。
沈黙の後、最初に呟いたのはその単語。
照史は≪管狐≫ではない。
その正体は、稲荷神社の神様。
そして、狐達を束ねる≪九尾狐≫。
更には、妖怪達を取り締まる狐の代官。
≪九尾様≫と呼ばれる事を嫌う照史は、部下に自分を≪お狐様≫と呼ばせている。
そして、その主な仕事は“悪人達を裁く”こと。
とはいえ最近は、悪さする奴らも減ってきた。
せやから仕事も無く、照史は退屈な日々を過ごしていたらしい。
そんな日々は、突然終わる。
それは、俺が産まれたから。
おばけ、妖怪、モンスター。
いろんなもんが見える俺の事を知った奴らが、また暴れ始めた。
それをすぐ傍で見張って取り締まれるように、照史は≪管狐≫のフリして俺に近付いてきたんや。
最初は、利用する為。
せやけどだんだん、情が湧いてきて。
いつの間にか、大切な存在になっていた。
淳｢・・・なるほどな。｣
照｢・・・・・・。｣
沈黙。
お互いに。
最初は利用する為。
それがいつの間にか、大切な存在に。
照史は、そう語った。
でもそれは、俺も同じや。
最初はただの、ボディガードやったのに。
いつの間にか、家族同然の大切な存在になってて。
淳｢・・・なぁ、照史。｣
照｢？｣
淳｢家には、ちゃんと帰ってくるんやな？｣
照｢っ、ええの・・・？｣
淳｢当たり前やろ。｣
お互いが、もっとちゃんと話してれば。
こんな妙なすれ違いを生む事も無かったかもな。
智｢ひゅーひゅー、ふたりともラブラブやーん♪｣
大｢ちょっと神山くん！｣
淳｢っ、お前ら聞いてたんか・・・｣
智｢バッチリ！｣
淳｢・・・・・・はぁ、｣
まだ微妙に残ってた緊張感が、ふたりの介入で霧散する。
何はともあれ、や。
これでとりあえず、一件落着やな。
淳｢なぁ、照史。｣
照｢ん？｣
淳｢≪管狐≫でも≪九尾狐≫でも、俺は照史が好きやからな。｣
照｢・・・うんっ。｣
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