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犬神と白稚児 ページ29







というワケで、やってきた神社。
山の麓に、ひっそりと建っている神社。
神主も巫女さんもおらん、寂れた神社。


智「こんな所に神社なんてあったんや・・・」


神山くんは、此処の存在を知らんかったみたい。

まぁ、俺が見つけたのも偶然やしな。
・・・その話は、また今度。


淳「照史、どう?」


いつもの神社。
せやけど今日は、少し違和感がある。
・・・ような、気がする。


照「何とも言えんなぁ・・・」


どうやら、照史も同じ事を思ってるみたいや。


淳「とりあえず、入ってみるか。」


ふたりの同意を得て、一歩踏み出す。
鳥居をくぐって、中へ。
境界線の中へ。

その瞬間、ブワッと嫌な空気が全身を包んだ。


照「大当たりみたいやね。」


照史の声は、何故か優しい。
でも、顔は真剣そのものや。


淳「・・・神様のバカ。」


怒りや恨み。
恐怖や悲哀。
そして聞こえる「どうして?」という声。

神様が、この神社の神様が。
ちゃんと此処におったら、こんな事にはならんかったんちゃうか。

そんな無意味な八つ当たり。
心が乱される。


照「淳太くんも神山くんも、オレから離れたらアカンで?」


照史はそう言うて、前を見据える。
その背中には、夕陽を受けて赤く輝く二本の尾。

・・・あれ?


照「じゃあ、行くよ。」


違和感を覚えたけれど。
それを吹き飛ばすくらいの悪意の塊が、俺の全身を貫いた。

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作者名:紙代 冬華 | 作者ホームページ:http  
作成日時:2019年9月20日 19時

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