犬神と白稚児 ページ29
◆
というワケで、やってきた神社。
山の麓に、ひっそりと建っている神社。
神主も巫女さんもおらん、寂れた神社。
智「こんな所に神社なんてあったんや・・・」
神山くんは、此処の存在を知らんかったみたい。
まぁ、俺が見つけたのも偶然やしな。
・・・その話は、また今度。
淳「照史、どう?」
いつもの神社。
せやけど今日は、少し違和感がある。
・・・ような、気がする。
照「何とも言えんなぁ・・・」
どうやら、照史も同じ事を思ってるみたいや。
淳「とりあえず、入ってみるか。」
ふたりの同意を得て、一歩踏み出す。
鳥居をくぐって、中へ。
境界線の中へ。
その瞬間、ブワッと嫌な空気が全身を包んだ。
照「大当たりみたいやね。」
照史の声は、何故か優しい。
でも、顔は真剣そのものや。
淳「・・・神様のバカ。」
怒りや恨み。
恐怖や悲哀。
そして聞こえる「どうして?」という声。
神様が、この神社の神様が。
ちゃんと此処におったら、こんな事にはならんかったんちゃうか。
そんな無意味な八つ当たり。
心が乱される。
照「淳太くんも神山くんも、オレから離れたらアカンで?」
照史はそう言うて、前を見据える。
その背中には、夕陽を受けて赤く輝く二本の尾。
・・・あれ?
照「じゃあ、行くよ。」
違和感を覚えたけれど。
それを吹き飛ばすくらいの悪意の塊が、俺の全身を貫いた。
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