お狐様と裁判所 ページ41
◆
「────────、ほら、さっさと歩け。」
淳「痛っ?!」
途切れていた意識が、衝撃で一気に戻る。
淳「・・・えっと、?」
「歩け。三度目は無いぞ。」
淳「痛い痛い! 分かりましたから!」
いつの間にか、俺は縛られていて。
その隣には、狐面を付けた男。
その後ろでは、黒い尾が揺れている。
(さっきの黒い影は、コイツかその仲間か・・・)
どうやら俺は、コイツに捕まったらしい。
(神ちゃんもシゲもおらんけど・・・ふたりは無事なんかな・・・)
三度目は無い。
そう言われたから、とりあえず歩きながら考える。
おそらく、あの稲荷神社はコイツらの住処。
そして俺らは、不法侵入者。
ただの人間なら良かったんかもしれへんけど。
生憎と、シゲは≪犬神≫で神ちゃんは≪白稚児≫や。
妖怪のテリトリーに余所者が這入ってきたら、それは立派な不法侵入や。
・・・まぁ、本人たちにその自覚は無かったんやろうけどな。
「もうすぐお狐様が御出でになる。それまで待っていろ、余所者。」
淳「痛っ!」
連れてこられたのは、時代劇に出てくるようなお白州。
蹴飛ばされて這い蹲るような体勢で、それでも周りを見回す。
周りに立っているのは人間やなく、狐面を被った妖怪達。
白、黄、薄茶、茶、黒。
いろんな色の尾は、多くても三本。
四尾以上の奴はおらん。
(照史は、此処にはおらんのかな・・・)
なかなかヤバい状態やっていうのに。
それでも照史のことを探してしまう。
智「痛ァ!」
大「っ、」
その両隣に、神ちゃんとシゲが倒れ込む。
直後、鳴り出す鈴。
シャラン、シャランと、鳴り響く。
「お狐様の、おなーりー!」
その音を凌ぐ、誰かの声。
そしてゆっくりと姿を現す、≪お狐様≫と呼ばれたもの。
?「・・・・・・じ、淳太くん?!」
聞き慣れた、その声。
驚いて、心配しているような。
まさか、まさか。
淳「・・・あき、と?」
自由が効かないながらも、どうにか視線を上へ向ける。
上。
お白州の、代官が座る位置。
そこに座る、狐面の男。
その背後には、白く輝く、九本の尾。
そして、面の下から覗いたのは、いつもの八の字眉の顔。
照「どうして・・・」
淳「お前が、逃げるからやろ。」
蒼白になった照史に向かって、俺は悪態をついた。
どういう事か、ちゃんと説明してもらおうやないか。
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