犬神と白稚児 ページ31
声にもならへん呻き。
それはまるで、犬の唸り声。
照「この子が呪いの本体になってもーてる! 犬の子の思念に同調し過ぎたんや!」
腕を振るい尾を振るいながら、照史が叫ぶ。
その声に集中したくても、痛みに意識が持っていかれる。
まるで、右腕が心臓になったんやないかというくらい、ドクドクと脈打つ傷口。
赤黒くなったそこからは、大量に噴出する血液。
アカンこれ、マジで死ぬかも。
照「あああああもう! 邪魔や!」
顔の横を通り抜ける風。
そして、吹っ飛ばされたボロボロの身体。
それを追い掛ける、透き通った光。
反射的に振り向く。
そこには、壁に叩き付けられた少年。
敵意はもう無い。
気絶している。
そして、少年の両手両足を縛り付けるもの。
輝く光と、透き通った四本の杭。
水晶と化した、よっつの尾。
照「淳太くん!」
気付くと、俺は照史に支えられていて。
右腕の痛みは、いつの間にか無くなっていた。
淳「あれ、俺・・・」
照「呪いは取り除いたから、もう大丈夫やで。」
淳「そっか、ありがと。・・・、」
今にも泣きそうな顔をしている照史に笑いかけて。
その視線を、ツイと壁際に向ける。
神山くんと同じ制服。
ボロボロの身体。
今のいざこざで付いただけでは無い、破れた制服の隙間から見える、多数の傷や痣。
淳「・・・この子が最初の、呪いの犠牲者なんやな。」
閉じられた瞳。
傷だらけである事を除けば、まるで眠っているような。
照「淳太くん・・・?」
淳「大丈夫やから。」
ゆっくり立ち上がり、彼に、重岡くんに近付く。
照史は心配そうな顔してるけど。
大丈夫。
たぶん、絶対、大丈夫やから。
134人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ