20話 ページ21
「勝利ー!」
「みんなー!どこー?」
瓦礫を避けながら懸命に探す2人。
最後のひとつをどかし、何とか中に入ることが出来た。
「みなさん。本当にすみません!巻き込んでしまって。」
「いいって。いいって。桜子さんの娘だ。勝利もAちゃんもおれの娘みたいなもんだからな。」
「宮近さん……。本当にありがとうございます。」
「そう言えばA、優太は?」
「優太はお兄ちゃんに足を打たれちゃって……。」
「お兄ちゃんって……。もしかしてあのたらこ唇の人か?」
「何で知ってるの?」
「ジンとこの前見たんや。工場の前で。な?」
「うん。すげえ悲しそうな顔してたけど?」
「いや、それはないよ。兄貴は変わっちゃったんだ。」
『兄貴は変わっちゃった』?
……まずい。このままじゃ。
「みなさん、早く逃げてください!じゃないと、じゃないとお兄ちゃんが来ちゃう!」
「Aちゃん、どういうこと?」
「海斗くん。何も聞かずに逃げて。全員。お兄ちゃんも。お兄ちゃんは私を迎えに来たって言ってた。早くしないとみんな拳銃で!」
「俺がどうした?」
「お兄ちゃん」「兄貴……。」
「あんだけ荒らしといたのになー。全員生きてたんや。」
「お前!Aちゃんに何する気や!」
「うるさいねん。ピーピーピーピー。」
「Aちゃん。逃げて。」
「マリくん?」
「今、ドイツにいる家族に連絡しておいた。Aちゃんをかくまってもらえるように。だから、空港まで行って、ドイツ行きの飛行機に乗るんだよ。」
「そんな!でもみんなは!」
「俺たちは大丈夫。力仕事で筋肉はついてるんだ。」
「海斗くん……。」
「逃げるのはAちゃんだ。さあ、行って。」
怖い。でも、みんなを犠牲にする訳には……。
Aの中で葛藤が繰り広げられていた。
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作者名:大仏さま | 作成日時:2017年7月10日 22時