12話 ページ13
「勝利はあの人のこと知ってたんだ。」
私だけが知らなかったことに拗ねてしまう。
「うん。ごめん、黙ってて。Aには教えないつもりでいたんだ。父さんとも母さんともそういう話になってた。」
「あの人は本当に私と勝利のお兄ちゃんなの?」
「そう。まあいわゆる生き別れってやつだね。」
なんで今更私たちの前に現れたんだろう。
「A。もしかして、前に言ってた男の人ってあの人のこと?」
「うん。前会った時の方が優しそうだったけどね。」
勝利は、昔と雰囲気が変わってしまった淳太の姿に戸惑っていた。記憶が正しければ、淳太は勝利の面倒をよく見てくれて、妬みや憎しみのオーラとは無縁のような人だったと思う。
「とりあえず、母さんの所行こっか。」
Aは黙って頷いた。
-----------------------------------------------------------------------
まだ目を覚ましていない桜子。
「ねえ。お母さんは助かるんだよね?」
「分からない。お医者さんも無事だとは言いきれないって。」
「あの人、お兄ちゃんなら助けられる?」
「なんでそこで兄貴が出てくるんだよ。」
「お兄ちゃんは絶対助けるって言ってたもん。」
大丈夫。そう自らに言い聞かせて、勝利は宮近家に電話をするために病室の外に出ていった。
「お母さん……。」
70人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:大仏さま | 作成日時:2017年7月10日 22時