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次の日の夜。
とある居酒屋の個室に俺はいた。
「Aちゃん、大丈夫だったんですか?」
あんなに弱ってるAちゃんを見るのは昨日が初めてで、
なんだか僕まで苦しくて
心臓がぎゅっと絞られているようだった。
高「あー、うん、…」
運ばれてきたお酒にも料理にも手をつけずに、
なんだか煮え切らない感じの優斗さん。
と思ったら、急に真面目な顔になって。
高「…浮所は、Aのこと大切に思ってるよな、」
浮「もちろん!…Aちゃんはどう思ってるかわからないけど、
俺はずっと好きだし、ずっと大切に思ってます」
この言葉に嘘はない。
優斗さんは、頷くと
高「今から言うこと、信じられないかもしれないけど
全部本当なんだ、聞いてほしい」
そう言った。
そこで聞いたことは衝撃的、なんて言葉じゃ片付けられない現実だった。
会社の健康診断で異常が見つかったこと
Aちゃんの体に良くないものが住みついていること
手術ができない位置にあって、強い薬で進行を抑えるしかないこと
もう長くは生きられないこと
それがわかった日に、俺に別れを告げたこと
今は治療期間であって、病院に入院しながら会社に来ていること
昨日のように、薬の副作用が強く出てしまう体質であること
会社はAの家庭の事情をわかっているから、全面サポート体制なんだ
だから、俺はAの病気について知っていた
そう続ける優斗さん。
高「俺、ずっと浮所は知ってるもんだと思ってて…
A、病気がわかったあと体調に変化はあったけど
雰囲気とか前と変わんなくて。
昨日、タクシーの中でA泣いたんだ、
久しぶりに飛貴に会えて嬉しい、って
Aは浮所のこと、今も好きなんだよ」
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作者名:かおるん | 作成日時:2018年11月21日 1時