今日:4 hit、昨日:1 hit、合計:5,815 hit
小｜中｜大
5-2 ページ7
.
｢しげちゃん、失礼します｣
｢なに…？｣
｢痒み止め塗るから、背中見るよ｣
Tシャツの背中を捲ると、それこそ雑念が小バエの如く湧き上がるのを受け流す。
掻いて赤くなってしまった部分に、適量のクリームを馴染ませる。
Tシャツをおろした後、何事もなく冷静に終えられたことに安堵してため息がもれた。
一方で彼はすうすう寝息を立てているのだから、何ともやりきれない気持ちになるのだ。
｢手、洗お…｣
洗面所に行って、クリームの付いた手を洗う。
…いや、洗おうとした。
｢A…｣
やはり人選ミスだったかもしれない。
アパートの友人とぎゃあぎゃあ言いながら、朝からまるまる一日かけて駆除すればよかったのかもしれない。
腕をとられて引かれるままバランスを崩せば、あっという間に布団に倒れ込む。
やってしまった。
｢…ん、ねよ｣
掛け布団までご丁寧に掛けてきた彼の手が、そのままぽふ、っと私の上に落ちた。
これは何だ、夢か。
抜け出そうと数分、あれこれと試行錯誤してみたけど、何が変わるわけでもなく。
強いて言うなら、
｢ばふばふすんなやぁ…｣
と、乗っかってただけの腕がシートベルト並にキツくなったのだけである。
むしろ状況が悪化した。
｢…最悪だ、｣
もう仕方ない、寝てしまえ。
目の前でぐうぐう呑気に寝ている彼を恨めしく見つめてやった後、無理矢理に目を閉じた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 34人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：茉莉花
| 作成日時：2022年8月20日 23時
