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「はい、着いたよー」


「ただいま!ただいまー!」


「はいはい、おかえり」



取り敢えず彼を近くに下ろし、せっせせっせと来客用の布団を敷く。

その上に投げ捨てれば、彼はもぞもぞ寝る体制を整えた。



「A…」


「なにー」


「はよねるでぇ」



ばっふばっふ!と自分の隣を叩く奴は、本当に馬鹿なのかもしれない。



「そこに寝ろと」


「ねろー!」


「私の布団こっちだけど」


「ええからこっちねろやあ!」



馬鹿だ、酒に飲まれた馬鹿がここにいる。

そしてその馬鹿のせいにして、誘惑に負けそうなシラフもここにいる。



「…い!や!だ!」


「なんでやぁー!」



一人さっさと歯を磨いて、そそくさと着替えてから自分の布団に潜り込む。

もう最悪!何なの、あの酔っ払い!





「…かゆい、」



ぽりぽり身体を掻く音が部屋に響く。



「…A〜、Aちゃ〜ん、」


「なに」


「せなか かゆいねん、かいて?」


「いやだ」


「えぇー…さなぎえきすのせいやって…」


「お風呂入ったでしょ?」


「はいったけどぉ…かゆいねんて」



ぽりぽり相変わらず掻いているかと思えば、めっちゃかゆい…なんてもぞもぞ敷布団に背中をこすり始める。

何してんの、もう。

あかんーかゆいー、って声はもう半分寝言なのに、頭までぼりぼり掻き始めているから厄介だ。



「…はいはい、掻けばいいんでしょ」



少し掻いたら満足してよね、と私が言った言葉は聞こえているんだろうか。

多分、風呂に入る時に多少掻いたんだろうから、それがアルコールのせいで悪化してるに違いない。



「しげちゃん、背中向けて」


「…ん、」


「逆だよ、こっち。左側」


「こっち…」


「だからそっちは右側でしょうが」



仕方なく私がまわり込んで、背中をそっとさする。



「…ちゃうってぇ、」



文句だけは寝言以上にいう彼に呆れながらやっぱり掻くのも気が引けて、葛藤すること数分。

仕方ないことだと言い聞かせて探し出してきた痒み止めクリームを、彼が痒いと特に掻く部分に塗ることにした。





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作者名:茉莉花 | 作成日時:2022年8月20日 23時

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