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ぼーっとテレビを見ていると、サナギエキスが風呂から出てきた。
濡れたままの髪をわしゃわしゃバスタオルで拭きながら私の近くまで来て、それから、
｢くらえ！サナギエキスやあー！！｣
ぼふっ、と私の顔面にバスタオルをくらわせた。
本当に本当にしょうもない男である。
サナギエキスもさることながら様々なエキスが付着してるであろうこれを、密封性の高い袋に入れたら誰かに売れるのではなかろうか。
そう思った私も、相変わらずどうしようもない女である。
取り敢えずバスタオルを使わないようなら除菌液に浸してやろうと、洗剤を取り出した私の背中にガシガシと何かが当たる。
間違いなく彼の足だ。
｢人をばい菌扱いすんなや、×××女！お前がばい菌や！｣
｢うるさいサナギエキス！｣
｢ええからはよ風呂入れ、このハエエキス！｣
｢残念でした〜私ハエには触ってませーん｣
｢はあ！？なんで家の主が触ってへんねん！自ら退治しろや！｣
｢退治は麺つゆトラップでしたし！｣
…やはりどう考えても低レベルな争いである。
｢お風呂入ってくるから、その間に乾かしておいてよね髪の毛！｣
｢言われへんでもやるわあほ！｣
｢うっさいぼけ！｣
今度は私がぴしゃりと洗面所のドアを閉めてやった。
汗でべとつく服を脱ぎ捨てて洗濯機に放り込もうとすれば、彼の服が当然のように居座っていた。
｢ちょっと！なんで洗濯機に入ってんの！｣
｢当然やろ！サナギエキス持ち帰らせんな、ここで綺麗にしろや！｣
｢はあ？サナギエキスなんて微々たるもんじゃん、重岡エキスの方が何倍もついてんだから持って帰ってよ！｣
｢嫌や！微々たるサナギエキスが繁殖したらどうすんねん！｣
｢するわけないでしょ！｣
言い合ったところで彼は持って帰る気がないようだ。
よくよく見れば下着なんかは入っていないわけだから、ある程度の配慮はあるらしい。
｢じゃあ洗うけど取りに来てよね！｣
｢明日持って帰るからええし！｣
｢………はい？｣
思わずバスタオル一枚でドアを開けた。
なんや色仕掛けか！とふざけた彼は置いておいて、どうにも話がおかしい。
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作者名：茉莉花
| 作成日時：2022年8月20日 23時
