「どうすんの、これから…」 ページ6
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一人暮らしの荒れた部屋に戻り、事の重大さを実感する。
けれどあの時、確かに桐山さんは私に盗めと言っていた。
「そうは言っても…」
頭を撫でる。
のぞむくんが気持ちよさそうに目を細める。
これからどうしよう。どうしよう。
彼に食費はかからない。
けれど、成長するのであれば、様々な意味での維持費が必要になるだろう。
「どうすんの、これから…」
膝を抱えて、顔を埋める。
彼は優しく私の頭を撫でてくれた。
可愛い、癒される。
「…頑張るしか、ないか」
どっちみち頑張る予定だった。
それに理由が増えただけ。
それなら良い。より頑張れるはず。
覚悟を決めて、彼との二人暮らしのため、頑張ることにした。
*
就活と並行して、バイト生活。
昼も夜も、毎日、毎日、毎日。
帰宅すれば、不安そうな顔したのぞむが待っている。
「いつも寂しい思いさせてるね。ごめん」
就職さえできれば、きっとのぞむとの時間は確保できる。
その時までの辛抱だから。
玄関までいつも迎えに来てくれるのぞむを抱きかかえて、そのまま風呂場へ。
いつもの流れだ。
蛇口をひねって、お湯をだだだーっと勢いよく浴槽に溜めていく。
ふあ、と我慢できなくなった欠伸を慌てて噛み殺した。
遊んであげたいところだけど、疲れていてそれどころじゃない。
「おー溜まったね。じゃあ、入ろっか」
のぞむの服を脱がせると、のぞむがとてとてと桶を持ってくる。
その中には、私のバイト初給料で買った水鉄砲と黄色いアヒルのオモチャ。
初めて見せたときののぞむの顔、動画として残しておきたいくらいだった。
ぱあああって眩しいくらい笑顔で。
それから私にぎゅーって抱き着いてきたの。
それから、お風呂の時はいつも連れてくる。
「はい、気を付けてね」
私の膝の上に器用に座って。
アヒル浮かべて遊んでいる。
指で押すと、ぴこっ、と音のするアヒル。
のぞむは押したりせずに、ただぷかぷか湯船に浮かべているのが好きみたい。
「アヒルさん気持ちよさそうだね。のぞむも気持ちいい？」
こくん、と頷く。
そっか、良かった。
のぞむの楽しそうな様子見てたら、疲れが和らぐ気がする。
のぞむのために、もっと頑張らなくちゃ。
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藤崎リコナ - このシリーズのお話大好きで、何回も読ませていただいてます！何回見ても泣いちゃいます (2016年10月18日 1時) (
レス) id: ee5122baa7 (このIDを非表示/違反報告)
きょうこ(プロフ) - 読ませていただきました！後半から涙が止まらなくて、今顔ぐちゃぐちゃですか 。感動しました。ほかのシリーズも楽しみに読まさせていただきます！ (2016年9月22日 17時) (レス) id: 514c52e757 (このIDを非表示/違反報告)
あんぬ - 感動しました！短編での小瀧も楽しみにしています！！ (2016年6月20日 12時) (レス) id: 865d5d2189 (このIDを非表示/違反報告)
ちびとら(プロフ) - 途中からどんどん切なくなってきて……もう涙が止まらないです(;_;)でもこのお話大好きです！ (2016年2月25日 1時) (レス) id: 97b52757b6 (このIDを非表示/違反報告)
のぞみ - 泣きました!もう、そりゃ、すごい量でした・・・。でも、すごくおもしろかったです！望くんの短編もっと読みたいです！ (2016年2月21日 18時) (レス) id: 997f1647f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：茉莉花
| 作成日時：2015年12月9日 2時
