「おはよう」 ページ38
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「…なあ、じゅんたくんは、どう思う？」
眠れないまま、朝が来た。
隣にいたじゅんたくんが、ふと顔をあげる。
「俺は、人間やろ？せやから、人形の気持ちが分かれへん。俺がしとる事が、正しいのかも分からへん」
かつて、プランツ・ドールはお金持ちの暇つぶしやった。
人間の形をしたペッドであり、オモチャ。
枯れようが、壊れようが、また買えばええか、ってその程度。
それが今、昔よりずっと人間らしい生活を送るようなって。
倫理とか道徳とか、そんなもんが適用されるんちゃうかな、て思うほど。
「俺、商売向いてへんのかもしれへんわ」
ただの家業や、継いだ時はそう思うてた。
せやのに、人形が主人を見送るたび。
生まれ変わって、また店先に並ぶたび。
俺は、俺のしとる事が何なのか、分からへんようになる。
もし、俺が血も涙もない商売人だったら。
人形の気持ち？そんなん知らん、商品なんやからどうでもええ。
そう、思えたら。
「じゅんたくん、俺はどうしたらええねやろ」
顔を前に倒すと、テーブルの冷たさが頬に染みる。
めっちゃ冷たい。
あれ、人形は温度を感じるんやったかな。
感じひんのは痛みだけ？
心の、痛みは？
「…そんなん、じゅんたくんが分かるわけないやんな。ごめん」
自嘲した俺を、じゅんたくんが抱き締める。
それにまた、自嘲したくなる。
「この重たすぎるくらいの友情で、じゅんたくんが話せるようなったらええのに」
呟いた言葉は、きっと届かへん。
*
｢のぞむ、おはよう｣
この前、ともひろが寝ていた部屋。
同じベッドに横になったまま。
のぞむは涙を流しながら、ぼんやり遠くを見てた。
｢みんな、後で来るんやって。久々に会えるなあ｣
なんて声を掛けたらええのか。
この場面はいつも、何度経験しても、そう思う。
人形は、生まれ変わる。
育った何十倍も何百倍もの速さで小さくなる。
人間と違って、同じ身体のまま。
主人のことだけ、すべて忘れて。
前の主人なんかおらへんような顔して、次の主人をこの店で待つんや。
それが幸せなのか、不幸せなのか。
俺は多分、一生答えが出せへん。
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藤崎リコナ - このシリーズのお話大好きで、何回も読ませていただいてます！何回見ても泣いちゃいます (2016年10月18日 1時) (
レス) id: ee5122baa7 (このIDを非表示/違反報告)
きょうこ(プロフ) - 読ませていただきました！後半から涙が止まらなくて、今顔ぐちゃぐちゃですか 。感動しました。ほかのシリーズも楽しみに読まさせていただきます！ (2016年9月22日 17時) (レス) id: 514c52e757 (このIDを非表示/違反報告)
あんぬ - 感動しました！短編での小瀧も楽しみにしています！！ (2016年6月20日 12時) (レス) id: 865d5d2189 (このIDを非表示/違反報告)
ちびとら(プロフ) - 途中からどんどん切なくなってきて……もう涙が止まらないです(;_;)でもこのお話大好きです！ (2016年2月25日 1時) (レス) id: 97b52757b6 (このIDを非表示/違反報告)
のぞみ - 泣きました!もう、そりゃ、すごい量でした・・・。でも、すごくおもしろかったです！望くんの短編もっと読みたいです！ (2016年2月21日 18時) (レス) id: 997f1647f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：茉莉花
| 作成日時：2015年12月9日 2時
