「あかん言うてるやろ!」 ページ37
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「…ベッド、行こうな。休まんと」
のぞむが少し落ち着いてきた。
せやから俺が、そう言うた瞬間。
のぞむが目を見開いて、暴れだした。
主人が死んだと分かった後、それは人間にも似ていて。
後を追うため、枯れようとすべてを拒んだり、自ら飛び降りて割れようとしたり。
別に珍しいことやない。
のぞむも、同じ。
声が出えへんのに、何か叫ぶように口を開けて。
髪を振り乱して暴れる姿は、見ているだけで胸が押しつぶされそうやった。
促した俺の手を、振り払う。
ここの人形たちは分かっとる。
この、休む、がどういう意味か言うことを。
「…しゃーないことや。こればっかりは、どうにもできひん」
説得なんかできるか、俺のこんな言葉、気休めにもならへん。
じゅんたくんに手伝ってもろて、二階へと引き摺って行く。
のぞむは激しく抵抗して、隙あらば階段から落ちようとする。
「あかん言うてるやろ!頼むから、やめろ!」
気付いたら、じゅんたくんまで、ぽろぽろ泣いとった。
俺が二人虐めとるみたいやん、俺が金目当てに人形生かしとるだけみたいやんか。
それでも、俺は人形のためこうするしかあらへん。
「ええから、休むんや!やないと、お前が、」
ベッドにようやく寝かせて、のぞむがまだジタバタ暴れる。
「じゅんたくん、縄!引き出しの中の!」
押さえつけとると、のぞむの爪が俺の頬を引っ掻いた。
多分、血が滲んで。
それを見たのぞむが、その血を何と重ねたのか。
人間みたいに死なせて、一緒にいきたい、と何度も口を動かす。
俺は、何も言えへんくて、ただ、目を逸らした。
「何してん!はよ縄!」
震える手で、じゅんたくんが縄を渡す。
それで動けへんよう手足を縛りつけて。
のぞむがじっと落ち着くのを待った。
それから何時間経ったか、ようやく暴れへんくなった。
のぞむの上、馬乗りの俺と、俺の下で顔を歪めて泣くのぞむ。
床にぺたんと座り込んで、じゅんたくんも泣いとる。
まるで地獄絵図や。
「…明日、また、来るな」
部屋を出てから、ようやく俺も泣けた。
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藤崎リコナ - このシリーズのお話大好きで、何回も読ませていただいてます!何回見ても泣いちゃいます (2016年10月18日 1時) (レス) id: ee5122baa7 (このIDを非表示/違反報告)
きょうこ(プロフ) - 読ませていただきました!後半から涙が止まらなくて、今顔ぐちゃぐちゃですか 。感動しました。ほかのシリーズも楽しみに読まさせていただきます! (2016年9月22日 17時) (レス) id: 514c52e757 (このIDを非表示/違反報告)
あんぬ - 感動しました!短編での小瀧も楽しみにしています!! (2016年6月20日 12時) (レス) id: 865d5d2189 (このIDを非表示/違反報告)
ちびとら(プロフ) - 途中からどんどん切なくなってきて……もう涙が止まらないです(;_;)でもこのお話大好きです! (2016年2月25日 1時) (レス) id: 97b52757b6 (このIDを非表示/違反報告)
のぞみ - 泣きました!もう、そりゃ、すごい量でした・・・。でも、すごくおもしろかったです!望くんの短編もっと読みたいです! (2016年2月21日 18時) (レス) id: 997f1647f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:茉莉花 | 作成日時:2015年12月9日 2時