「無理なんかしてない！」 ページ34
.
目眩が続く。
空腹感は、活動性を高める。
餓死しないように餌を探しに動くため、身体を動かそうと神経が働くから。
でも人間の場合、活動性が高まったところで事態は何も改善していかない。
「ただいまー」
「おかえり、」
のぞむが、にっこり微笑む。
また、寂しげな顔をして。
「ね、のぞむ。ベッド行こ」
のぞむの手を取って、笑う。
少しだけ肌がかさついてるような気がした。
今度ハンドクリーム塗ってあげなきゃ。
「…もう、寝るん？」
「違うよ。良いから、ね」
薄っぺらな笑い声が漏れた。
のぞむの目が、不安げに揺らぐ。
今夜は、少しでも早くのぞむに会いたかった。
一秒でも早く、会わなければいけなかった。
のぞむの手を引いて、寝室に行って。
「そこ、横になって」
「なんで」
「お願い」
恐る恐る、のぞむが横になって。
上着を脱ぐと、その上に馬乗りになった。
「ねえ、のぞむ。人形って、えっちできるの？」
「は…？」
「質問、答えてよ。ねえ、できる？」
聞きながら、ブラウスのボタンを開ける。
その手が少しだけ、震えたけど、そんなの気のせい。
ボタンの糸が緩んでるのも、何もかも。
「もうキスだけじゃ足りなくない？のぞむも大きくなったし、そろそろ良いよね」
のぞむが、ぶんぶん首を振る。
「できひん…っ。できひんから、やめてや」
そんな泣きそうな顔で、拒否しなくてもいいのに。
「本当に？嘘じゃないの？」
空っぽな笑い声が漏れた瞬間。
ぽたぽた、のぞむの服に丸い染みができた。
「…A、もう、無理やって。仕事、辞めよ？」
のぞむの指が私の頬をなぞる。
泣いてるんだ、ってその時、気が付いた。
「辞められないよ。何言ってんの？お金がいるの。のぞむだって分かってるでしょ？」
「照史に言うたら、いくらでも待ってくれる。無理してまで払うてほしくない」
「無理なんかしてない！」
パワハラだけなら良かった。
それならまだ、まだ、耐えられた。
それなのに、大人しそうだから。
抵抗しなさそうだから、って。
上司に、つけ込まれた。
抵抗したら、この会社、クビにしてやるって言われて。
私って、本当にツイてない。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1474人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ジャニーズWEST」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
藤崎リコナ - このシリーズのお話大好きで、何回も読ませていただいてます！何回見ても泣いちゃいます (2016年10月18日 1時) (
レス) id: ee5122baa7 (このIDを非表示/違反報告)
きょうこ(プロフ) - 読ませていただきました！後半から涙が止まらなくて、今顔ぐちゃぐちゃですか 。感動しました。ほかのシリーズも楽しみに読まさせていただきます！ (2016年9月22日 17時) (レス) id: 514c52e757 (このIDを非表示/違反報告)
あんぬ - 感動しました！短編での小瀧も楽しみにしています！！ (2016年6月20日 12時) (レス) id: 865d5d2189 (このIDを非表示/違反報告)
ちびとら(プロフ) - 途中からどんどん切なくなってきて……もう涙が止まらないです(;_;)でもこのお話大好きです！ (2016年2月25日 1時) (レス) id: 97b52757b6 (このIDを非表示/違反報告)
のぞみ - 泣きました!もう、そりゃ、すごい量でした・・・。でも、すごくおもしろかったです！望くんの短編もっと読みたいです！ (2016年2月21日 18時) (レス) id: 997f1647f4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：茉莉花
| 作成日時：2015年12月9日 2時
