プランツ・ドール Nozomu. K

「大丈夫だって」 ページ31

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｢なあ、ご飯食べてる？食べてへんやろ｣



｢食べてるって笑 ほら、いただきます｣



私は何も教えてくれない。

次第にその事を理解したのぞむは、最低限である、私の寝食の心配を中心にするようになった。

のぞむに見えるように、朝食を食べる。

口に含むと、猛烈な吐き気がする。

でも、そんな素振りは絶対に見せない。

ぱくぱく食べ進めて、食器を洗って。

腕組んで、私が食べるのをじーっと見つめてたのぞむに微笑む。



｢だから、心配し過ぎだってば。この前少し寝られなかっただけでしょ？もー｣



｢ちゃう、絶対ちゃうかった！｣



｢でも今は寝れてるでしょ？大丈夫だって｣



ふふ、って笑う。

何もかも嘘。

今も寝れてない。

のぞむが



『Aが寝られるまで、俺も寝えへん！』



とか言い出すから、寝たふりが上手くなった。

手を繋いだり、子守唄歌ってくれたり。

のぞむなりに私が寝られるように工夫してくれているのは、本当に嬉しい。

でも、それくらいじゃ、もう効かなかった。

朝が来る。

寝たら朝が来て、また会社に行かなきゃいけない。

休みがない、休憩もない。

上司は二言目には、これだからゆとりは！これだから女は！って私を怒鳴りつける。

サービス残業という名の勤務時間の延長が続いて。



『これでもっとのぞむといれるよ！』



そんな約束、指で数えるほどしか果たせてない。



｢じゃ、そろそろ行ってくるね。今日は？お店行くの？｣



｢行かへん。待ってる｣



｢そっか、ありがと。行ってきます｣



食べ物がこみ上げてくる。

早く、早く。

部屋を出て、吐き出したい。

のぞむに手を振って、部屋を出て。

足音が聞こえてしまう間は、普通の速度を保った。



｢おええっ…｣



近くの公園のトイレ。

さっき食べたものが全部出てくる。

持ってた水で口を濯いだけど、ずっと嘔吐物の臭いが口からしてる気がした。

備え付けの鏡には、具合の悪さなんて微塵も感じさせない私の顔。

メイクには本当に助けられてる。

のぞむにも、もうクマは全然バレてないし。

頬に手をやって、今日もバッチリって確認して。



『Aさんは良いわね。お化粧ばっちりする余裕があるみたいだから。他の若い子なんて、お化粧する暇削ってお仕事してるのに』



ちくちく言われた、先輩の嫌味を思い出した。

私がどんな思いでメイクしてるか、知らないくせに。

キリキリする腹痛に、薬はいつの間にか効かなくなった。






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