「ご褒美、ちょーだい?」 ページ26
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「ただいまー!」
晩御飯の準備してたら、玄関から大声。
私が先に帰ってるなんて初めてだからお出迎えしてあげようかな。
そう思っていたら、どたばた足音がして。
「わっ、」
のぞむが上着も脱がず抱き着いてきた。
「なになに、どしたの」
「Aに会えへんくて、寂しかった」
耳元で声がして、今夜はいつもより甘えたいみたい。
「拗ねて冷たかったの誰?」
「あれはAが悪い、」
俺の方がええよね?ね?って、そんな愚問。
「あんなちっちゃい子に嫉妬してどうするの?」
「そうやけど、」
ぎゅーっと腕の力が強くなって。
「俺がちっこい時のこと、思い出してん」
弱々しい声でのぞむが言った。
私も考えてた。
ひとりで留守番してる間、のぞむもこうやって泣いてたのかなあって。
毎日、この部屋に一人で何してたのかも全然知らないし。
早起きさせちゃってたから、二度寝はしてたと思うんだけど。
「ね、のぞむはちっちゃい時、いつも何して私の帰り待ってたの?」
「んー、何してたんやったかなあ。…あ、寝てた」
と、予想通りな反応。
「やっぱり」
「やって、寝とくんが一番時間がはよ経つから」
けど、寝ても全然時計の針進まんくて、Aまだかなあ、てめっちゃ思うてたなあ
のぞむが、ま、今もやけどね、って微笑む。
寂しい思いさせてたことを痛感した。
そっか、そうだよね。
きっとのぞむが一人で過ごす日中は、私が想像するよりずっと長かったはず。
「ごめんね」
ぎゅっと抱き締めて、少し明るくなった髪をくしゃくしゃ撫でる。
「いやー俺ええ子やったなあ。な、そう思うやろ?」
のぞむが、にーって笑ってる。
「…自分で言ってるし。そう思うけど、何、」
何やら嫌な予感。
「やから、ご褒美、ちょーだい?」
小首を傾げるあざとさとか。
何だかんだ、絶対に、可愛いって自覚してるところとか。
私がその仕草に弱いの知ってることとか。
「ちっちゃい時の方が可愛かったのにね…」
「イケメンなり過ぎてもうたなー!」
得意げに笑うその顔も、その減らず口も。
大好きだから本当に腹が立つよ、なんて。
「ちょっ、なにすんねんっ」
言わない代わりに、胸ぐら掴んで、天狗になってる鼻に噛み付いてやった。
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藤崎リコナ - このシリーズのお話大好きで、何回も読ませていただいてます!何回見ても泣いちゃいます (2016年10月18日 1時) (レス) id: ee5122baa7 (このIDを非表示/違反報告)
きょうこ(プロフ) - 読ませていただきました!後半から涙が止まらなくて、今顔ぐちゃぐちゃですか 。感動しました。ほかのシリーズも楽しみに読まさせていただきます! (2016年9月22日 17時) (レス) id: 514c52e757 (このIDを非表示/違反報告)
あんぬ - 感動しました!短編での小瀧も楽しみにしています!! (2016年6月20日 12時) (レス) id: 865d5d2189 (このIDを非表示/違反報告)
ちびとら(プロフ) - 途中からどんどん切なくなってきて……もう涙が止まらないです(;_;)でもこのお話大好きです! (2016年2月25日 1時) (レス) id: 97b52757b6 (このIDを非表示/違反報告)
のぞみ - 泣きました!もう、そりゃ、すごい量でした・・・。でも、すごくおもしろかったです!望くんの短編もっと読みたいです! (2016年2月21日 18時) (レス) id: 997f1647f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:茉莉花 | 作成日時:2015年12月9日 2時