「…旨い？」 ページ21
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｢…ねえ、そろそろ自分で食べない？｣
あー、と口を開けていたのぞむが、不満げに口を尖らせた。
｢なんで？｣
｢もうちっちゃくないでしょ？｣
私の手にはきらきら美味しそうなコンペイトウ。
今まで変わらずにあーん、していたけど。
…あーん、もういらなくない？
｢ええやん、して？｣
｢やだよ。恥ずかしくなってきた。自分でどーぞ｣
のぞむにコンペイトウをわたす。
ちっちゃい口でぱくっと食べるのは可愛かったけど、もうちっちゃくないし。
｢ちぇ、Aが冷たい｣
むす、と不機嫌そうな顔して。
のぞむが小さく手招きをした。
｢なに？｣
｢自分で食べるから、もっと近く来てや｣
｢しょーがないなあ…｣
嬉しそうな顔したのぞむが、コンペイトウを持って。
私の口に、むにっと押し付けた。
｢食べたことないやろ？めっちゃ旨いねん、食べて｣
ほれほれ、ってのぞむが更に指で押し付ける。
口を開けたら、ころころ口の中にコンペイトウが入る。
すごく甘いけど、くどくない。
びっくりするくらい美味しい。
そう、思っていたら。
｢ちょっ…なに…っ｣
のぞむの手が、そっと私の首を支える。
慌てて身体を押したけど、そんなのびくともしなくて。
気が付いたら、キスされてた。
一瞬触れるだけの可愛いやつだと思ったのに。
｢っん！？｣
するり忍び込んできた舌が、もう小さくなったコンペイトウを絡め取る。
恥ずかしくて、ぎゅっと目を瞑ると、ゆっくり唇が離れた。
｢…旨い？｣
恐る恐る目を開ける。
少し照れた顔したのぞむが、私の顔をのぞき込んでた。
｢うるさい、｣
顔が熱い。むかつく。
｢そんなのどこで覚えたの｣
のぞむの頬っぺを、ぐにっと摘む。
少しくらい痛い思いすればいいんだ。
｢秘密｣
なのに、笑うだけで全然痛そうじゃないの。
｢…痛くないの？｣
｢痛みは感じへんねん｣
もっと力を込めてから手を離しても、赤くなってない。
聞けば、故障はするけど、病気にもならないんだって。
｢やっぱり人形なんだね｣
分かってるつもりでも、時々忘れそうになる。
｢…やから、もう１個、ね？｣
コンペイトウを持ったのぞむが、ずるい顔してる。
｢今週分は終わったでしょ｣
｢なんや、忘れてる思うたのにー｣
くすっと笑ったのぞむは、もうすっかり別人みたいで。
一緒に寝るのも心臓に悪そうだから、もうやめようかな。
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藤崎リコナ - このシリーズのお話大好きで、何回も読ませていただいてます！何回見ても泣いちゃいます (2016年10月18日 1時) (
レス) id: ee5122baa7 (このIDを非表示/違反報告)
きょうこ(プロフ) - 読ませていただきました！後半から涙が止まらなくて、今顔ぐちゃぐちゃですか 。感動しました。ほかのシリーズも楽しみに読まさせていただきます！ (2016年9月22日 17時) (レス) id: 514c52e757 (このIDを非表示/違反報告)
あんぬ - 感動しました！短編での小瀧も楽しみにしています！！ (2016年6月20日 12時) (レス) id: 865d5d2189 (このIDを非表示/違反報告)
ちびとら(プロフ) - 途中からどんどん切なくなってきて……もう涙が止まらないです(;_;)でもこのお話大好きです！ (2016年2月25日 1時) (レス) id: 97b52757b6 (このIDを非表示/違反報告)
のぞみ - 泣きました!もう、そりゃ、すごい量でした・・・。でも、すごくおもしろかったです！望くんの短編もっと読みたいです！ (2016年2月21日 18時) (レス) id: 997f1647f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：茉莉花
| 作成日時：2015年12月9日 2時
