「いたいのいたいの、とんでけー」 ページ18
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『のぞむ、もう少し大きくなったら、もう抱っこしないからね?』
そういえば、こんな約束を前にした。
いつか来ると思っていたその日は、想像していたよりずっと早く来たのだ。
「痛っ!!」
「A!?だいじょうぶ?」
それは突然のことで。
いつものように帰宅し、いつものようにのぞむを抱き上げた時、悲劇は起こった。
日頃からダメージを受けていた腰が、ピキッて音とともに、遂に限界を迎えたらしい。
「のぞむ…おりて…」
のぞむを抱えたまま力なく崩れる。
確かにここ数日、のぞむが重たくなった気はしていたけど。
こんな簡単に抱っこできなくなるなんて。
「のんが、だっこ、て言うたから?のんのせいで、Aいたなった?」
目をうるうるさせて、のぞむが私を見る。
「のぞむのせいじゃないよ。大丈夫、」
…ではないな。
確実に大丈夫ではないけど、でものぞむのせいじゃない。
「ごめんなさい…」
私が腰を押さえているのを見て、とことこ後ろに回って。
ちっちゃい両手が私の腰を撫でてる。
「ありがとう。のぞむがなでなでしてくれたから、早く治るね」
「ほんまに?もっとなでなでする!」
のぞむの両手が忙しなく動いて。
もはやなでなでっていうか、こすってるのかな?って感じだけど。
気持ちは嬉しいし、今は動けそうにない。
しばらくこのままでいっか。
「ようなりますよーに。いたいのいたいの、とんでけー」
って可愛い声が聞こえて、頬がだらしなく緩む。
優しい子に育ってくれてよかった。
なんて、安心する。
「のぞむ、もう抱っこできなくなっちゃった」
「…おん、」
「これからは、ぎゅーだけでもいい?」
そしたら、沈黙。
そっと振り向くと、のぞむがなでなでしながら、寂しそうに俯いてた。
「やだ?」
「…ややない、もん」
ぐって唇噛んで、我慢してる。
可哀想で、でも可愛くて、複雑な気分。
「のん、がまんできる…」
「ありがとう。のぞむは偉いね」
本当に?って確認するのも、我慢しなくていいよ、って言うのも違う気がして。
強がらせてる、って分かってるけど。
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藤崎リコナ - このシリーズのお話大好きで、何回も読ませていただいてます!何回見ても泣いちゃいます (2016年10月18日 1時) (レス) id: ee5122baa7 (このIDを非表示/違反報告)
きょうこ(プロフ) - 読ませていただきました!後半から涙が止まらなくて、今顔ぐちゃぐちゃですか 。感動しました。ほかのシリーズも楽しみに読まさせていただきます! (2016年9月22日 17時) (レス) id: 514c52e757 (このIDを非表示/違反報告)
あんぬ - 感動しました!短編での小瀧も楽しみにしています!! (2016年6月20日 12時) (レス) id: 865d5d2189 (このIDを非表示/違反報告)
ちびとら(プロフ) - 途中からどんどん切なくなってきて……もう涙が止まらないです(;_;)でもこのお話大好きです! (2016年2月25日 1時) (レス) id: 97b52757b6 (このIDを非表示/違反報告)
のぞみ - 泣きました!もう、そりゃ、すごい量でした・・・。でも、すごくおもしろかったです!望くんの短編もっと読みたいです! (2016年2月21日 18時) (レス) id: 997f1647f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:茉莉花 | 作成日時:2015年12月9日 2時