プランツ・ドール Nozomu. K

「いくよー？」 ページ14

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「ね、水たまりで、ばちゃばちゃしたくない？」



「…ばちゃばちゃ？」



「うん、あとで教えてあげる。その前に、ちょっとだけお買い物行こっか」



ふと思いついて、近所の雑貨屋。

ピンクの可愛い長靴と、フードに動物の耳がついたカッパを買った。



「これ、のんの？」



「そうだよ。可愛いでしょ？」



のぞむが何度も強く頷いた。

そのまま店内でお着替えして。

フード被って、獣耳の生えたのぞむが嬉しそうに外に飛び出す。



「わあああっ！」



雨空に両手伸ばして、くるくる回って。



「ばちゃばちゃ、おしえてっ」



って、私のところに走って戻ってきた。



「いくよー？」



のぞむに見えるように、水溜りを勢いよく踏む。

びしゃ！って水が飛び散って、のぞむがきらきら目を輝かせた。

普通のスニーカーだったから思いっきり染みたけど、まあ、いっか。

のぞむが、恐る恐る近くの水溜りを踏む。

ちゃぷっ、て水が跳ねて、のぞむが嬉しそうに私を見た。



「みててっ」



小さな水溜りも大きな水溜りも。

近所の水溜りは全て制覇するんじゃないかってくらい。

踏んだり、両足そろえて飛び込んでみたり。

のぞむが満足して戻ってきた頃には、全身びっちゃびちゃ。

傘じゃなくてカッパ買って、本当に正解だった。



「のぞむ、楽しかった？」



「たのしかった！」



また手を繋いで、水浸しのちっちゃい獣と帰り道。

散々遊んだせいか、歩きながら目を擦ってる。



「眠たい？」



「ねむたない、」



ふああって欠伸もしてるのに。



「ほら、抱っこしてあげる」



「ええの。のん、あるく」



長靴も水溜りも、すっかりお気に入りみたい。

でも結局、部屋に着いた時には、私の腕の中ですやすや夢の中。

思いっきり楽しんでもらえて良かった。

雨か汗で張り付いた髪も、服も、気になるところだけど。

のぞむが起きてからお風呂に入れてあげればいっか。

ベッドの上にバスタオル敷いて、その上にのぞむを寝かせて。

むにゃむにゃ動く唇をつついて遊んでみたり、羨ましいくらい長いまつげに嫉妬してみたり。

まったりしたすごく幸せな時間。



「また遊ぼうね」



頭を撫でて、ふと自分が微笑んでいることに気付く。

無機物になんて愛情注げないと思ってたのになあ。

カレンダーには“雨の日デビュー”。

スマホには、水溜りではしゃぐ、のぞむの写メ。

明日からまた頑張ろ。

そう思って、のぞむの隣で目を閉じた。






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