プランツ・ドール Tomohiro. K

「待っててなー」 ページ38

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キッチンから聴こえる包丁の音。

具材を炒める音。

それと、ともひろの鼻歌。

じぃっと見つめてみる。

そしたら、ふと顔を上げてくれて。



「もう少しでできるから、待っとってなー」



ともひろの、いつもに増して可愛い声。

ふわふわ上機嫌で、にっこにこしてる。

というのも今日は、待ちに待ったクリスマスイブ。

そして、待ちに待ったともひろの手料理初披露の日だ。



「うん、待ってる。んー、いい匂いする…」



「やろ？今までで１番、上手くできそうやねん」



少し誇らしげな顔して、また料理に戻る。

なんか、幸せだな。

せっせと料理するともひろを見てるだけで、そう思う。

仲直りして以来、ともひろは少しだけ変わった。

まず、毎日お店に行かなくなった。

本人曰く、



『しばらくお店におったから、あっくんに、何かあった時以外は来んでええ、て言われてん』



とのことらしい。

なんだ、少しがっかり。

もっと嬉しくなるような答えを期待していたのは、秘密だ。

でも、お見送りもお出迎えもしてくれるようになったのは嬉しい。

それと、何故か料理以外の家事にも目覚めたらしい。

今までは私がやっていたことを率先してやってくれている。

…まあ、私の洗濯物も平気でやってくれているのは、中々に複雑ではあるけど。

そして、ともひろが言っていたように、私たちは多分同い年になった。

人形は、人間と同じ速度では年を取らない。

そして、人間と同じように一定の速度でもない。

何週間で何歳になる、とかいう基準がないそうなのだ。

ともひろがよく言う、だいきくんは修理以降、ゆるやかな成長になったらしい。

そんな感じで不確実だけど。

でも何となく、追い付いてくれたような気がする。

ということはつまり、私は子育てを終えた。

ものすごく短期間であったけれど、注意事項をそこそこに守り、幼かったともひろを育て終えたのだ。







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