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その日の帰りは朝とは打って変わって機嫌が良かった。これは夜飯炒飯やな、しかも餃子付き。そう思いながら日の沈みかけた薄闇の中を歩く。
「…なぁ、最近吸ってないやん」
「…ん?…あぁ、煙草?」
「おん」
「いや、禁煙しよかな思うて」
「え、なんで?」
「まぁ、節約?それに副流煙って体に悪いらしいし」
渋谷さんに冗談混じりに禁煙しろと言われてから、考えていた。そもそも死ぬまで吸い続けるのは嫌だと思っていたし、節約するならという話はごもっともだな、と。
でもそれ以上に、神山のことが気になっていた。主流煙より副流煙の方が体に悪いことは知っていた。だから煙草を吸わない神山と一緒に住むようになってからは、ベランダだとか、外で吸うようにしていて。それくらいするなら止めてみようかと、とりあえず買わないようにしていたところだった。
「…そんな、気にせんでええで」
「まぁ、どっちにしろ止めよう思うてたし」
「…ふぅん」
そこで会話が終わった。しかし少しの違和感。なんだか少し機嫌が悪くなっている。全く心当たりが無いのに拗ねられても困る。
「…なぁ」
「ん?」
「なんか俺のせいみたいで嫌やねんけど」
「いや、だから」
「渋谷さんとか、かっこええやん、煙草吸ってて」
「…は?」
話が飛び飛びで理解できない。俺の意志で止める言うてるのに変な勘違いしよるし。その上いきなり渋谷さん。てか最近渋谷さん渋谷さんて、多いねんけど。
「煙草って、カッコええやん」
「ん、まぁ?」
「…吸ってたらええやん」
「……吸いたいん?」
「いや、別に俺はええねん」
「え、俺に吸って欲しいん?」
「いや、吸って欲しいっちゅうか…」
いきなり口ごもる。ヘタクソか。
もう慣れたことだが、神山はめちゃくちゃ分かりやすい。気づかないフリをしてやることが大抵だが、たまには虐めてやるのも良いかも。
「なに照れてんねん」
「はっ?!て、照れてへんわ!なんで俺が照れなあかんねん…」
「ふはっ、分かりやす」
「…っ、るさい」
「別にええけど、煙草吸っても」
「…勝手にせぇ」
自分から煙草を止めるなと言っておきながら勝手にしろなんて、矛盾だらけだ。自分の中ではすっかり禁煙モードになっていたというのに。そもそも禁煙を止める奴がどこにいるだろう。やっぱりうちの居候は変わり者だ。
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くすみピンク(プロフ) - ほのかさん» ほのかさん、ありがとうございます!時差がありますが以前もありがとうございました<(_ _)> ずっと応援していただけて本当に嬉しいです!ぜひこれからもよろしくお願いします(´˘`*) (2018年2月6日 16時) (レス) id: 95e4c10c3b (このIDを非表示/違反報告)
ほのか - 初コメ失礼します。移行おめでとうございます!ずっと前からお話を拝見させていただいてました。本当に大好きで又お話を書いてくだっさって嬉しいです(*^_^*)更新頑張ってください(^o^) (2018年2月4日 17時) (レス) id: da2d0b67d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:くすみピンク | 作成日時:2018年2月4日 13時